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2022年10月11日 (火)

東海第二原発運転差止請求事件第1審判決

水戸地裁R3.3.18

<事案>
茨城県東海村所在の東海第二発電所に関して、その周辺に居住する者等であるXらが、本件発電所を設置する電力会社であるY(日本原子力発電㈱)に対し、本件発電所の原子炉の運転により人格権が侵害される具体的危険がある⇒人格権に基づき、原子炉の運転の差止めを求めた。

<争点>
①核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律が違憲無効であることを理由とする差止めの可否
②人格権に基づく原子炉院展差止請求における要件等
③基準時地震動の策定
④耐震安全性
⑤津波に対する安全確保対策等
⑥火山(気中降下火砕物)に対する安全確保対策
⑦事故防止に係る安全確保対策等
⑧立地審査及び避難計画
⑨東海再処理施設との複合災害の危険性
⑩経理的基礎の要件の範囲及びその有無等

<判断>
前記②の争点について
①発電用原子炉施設が、原子炉の運転により人体に有害な放射性物質を多量に発生させることが不可避であり、これを封じ込め管理し続けることができなければ安全とはいえない⇒その設置者には、高度な科学技術により原子炉を制御し放射性物質を安全に管理することが求められる。
②原子炉運転中に事故の要因となる自然災害等の事象の発生に対する予測を確実に行うことはできず、いかなる事象が生じたとしても放射性物質が周辺の環境に絶対に放出されることのない絶対的安全性を確保することは、現在の科学技術水準においても達成困難⇒IAEAは、深層防護の考え方を採用。
③わが国の原子力基本法は、原子力利用の安全の確保について確立された国際的な基準を踏まえるものとし、原子力規制委員会も、この考え方を踏まえ、設置許可基準規制において第1から第4までの防護レベルに相当する安全対策を規定し、避難計画等の第5の防護レベルに相当する安全対策については、災害対策基本法及び原子力災害対策特別措置法によって講じるものとしている。

深層防護の第1から第5までの防護レベルのいずれかが欠落し又は不十分な場合には、当該発電用原子炉施設は安全とはいえず、周辺住民の生命、身体が害される具体的危険がある。

第1から第4までの防護レベルに相当する事項:
原子力規制委員会設置法及び原子炉等規制法により、原子力利用における安全確保に係る施策を一元的につかさどり、専門的知見に基づき、中立公正な立場で独立して職権を行使する原子力規制委員会の許認可が必要とされており、同委員会の専門的技術的裁量に委ねられていると解される

発電用原子炉施設の設置(変更)許可等の許認可がされている場合には、具体的審査基準に不合理な点があり、あるいは当該発電用原子炉施設の設置(変更)許可等の申請が同審査基準に適合するとした同委員会の判断の過程に看過し難い過誤、欠落があると認められない限りは、当該許認可の要件に係る安全性が備わっているものと認めるのが相当。

第5の防護レベル:
原子力災害特別措置法に基づき定められた原子力災害対策指針がその中核を成している。

・・・そのような自然現象による原子力災害を想定した上で、実現可能な避難計画が策定され、これを実行し得る体制が整っていなければ、PAZ及びUPZ内の住民との関係で、第5の防護レベルが達成されているとはいえず、人格権侵害の具体的危険がある。

・・・・大規模地震等の自然災害を前提として実行可能な避難計画が策定されているとはいえない状況にある。

原子力災害対策指針の想定する段階的避難等の防護措置が実現可能な避難計画及びこれを実行し得る体制が整えられているというにはほど遠い状態にあり、Xらのうち、PAZ及びUPZ内の住民である者については、人格権侵害の具体的危険がある。

<解説>
●原子力発電所に係る運転差止請求の要件等
原子炉設置許可処分の取消訴訟において
最高裁H4.10.29:
原子力委員会(当時)等が調査審議に用いた具体的審査基準に不合理な点があるか、あるいは当該原子炉施設が前記の具体的審査基準に適合するとした原子力委員会等の調査審議及び判断の過程に看過し難い過誤、欠落がある⇒それに依拠してなされた行政庁の同処分は違法
その立証責任は、本来原告が負うべき
but
行政庁において、前記の具体的審査基準並びに調査審議及び判断の過程等に不合理な点がないことを相当の根拠、資料に基づき主張、立証する必要があり、行政庁がこれを尽くさない場合には、行政庁の判断に不合理な点があることが事実上推認される。

人格権に基づく原子炉運転差止請求の要件である「具体的危険」の内容について、
深層防護の各防護レベルのいずれかに不十分な点があることと解釈して、第5の防護レベルに位置付けられる避難計画や立地審査の問題について、具体的危険を左右する問題の1つとして明確に取り上げた。

● 避難計画
避難計画にについて、原子力災害対策指針の想定する段階的避難が実現可能な避難計画が策定され、それを実行し得る体制が整っていなければならない。

判例時報2524・2525

大阪のシンプラル法律事務所(弁護士川村真文)HP

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