軽度知的障害を有する年少の養女に対する監護者性交等の事案
福岡高裁R3.10.29
<事案>
被告人が、当時14歳の養女(被害者) を現に監護する者としての影響力があることに乗じて、被害者と性交した。
<経緯>
一審無罪(被害者証言の信用性を否定)⇒検察官控訴⇒
控訴審:第一審判決は不合理で、虚偽供述の動機の点は自動供述の専門家の知見を利用して吟味する必要があり、地裁に差し戻す(上告棄却)
<差戻後第一審>
検察官が被害者の供述経過を立証趣旨として請求した、児童相談所の面接時の録音録画記録媒体及び供述調書が採用。
被害者が児童相談所での面接において、職員の質問に対し、自らの言葉ないし身振りで自発的に応えており、誘導や暗示といった状況は認められない⇒被害者証言の信用性を肯定し、懲役7年の実刑。
<判断>
被害申告の経緯:
被害者は、母親に対し胸を触られた旨の被害を打ち明けた翌日に児童相談所に一時保護され、面接の場において、職員のオープンクエスチョンに対し、自らの言葉ないし手振りによって自発的に答えており、質問者による誘導や答えを示唆する状況は認められず、面接過程における記憶の変容や歪曲、新事実の作出を疑わせる状況は存しない。
その後検察官による2回の面接を経て、 差戻前第1審で証言しているが、供述の核心部分は一貫しているし、被害について作為的・誇張的に供述したとも認められず、内容的にも不自然・不合理な点はない⇒被害者証言は基本的に信用性が高い。
陰部の損傷状況に関する医学的な推察に極めてよく整合する。
⇒被害者証言の信用性は十分に認められる。
判例時報2520
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