普通河川の敷地の占有に関する不許可処分の取消請求(肯定事例)
東京高裁R3.4.21
<事案>
X:太陽光エネルギーによる発電事業等を目的とする合同会社。
Y:静岡県伊東市
Xは、本件事業の中で、伊東市普通河川条例4条1項2号の規定に基づきYが管理する普通河川について敷地の占用の許可を求める2つの申請⇒Yの市長が2つの申請を許可しない旨の処分
⇒
本件各不許可処分は裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用してされたものであり、所要の処分の理由も提示されていない⇒本件各不許可処分の取消しを求めた。
<判断>
●裁量権の範囲の逸脱又は裁量権の濫用について
Yの定める普通河川条例には、河川の敷地の占有を行うにはY市長の許可を受けるべき旨が定められているが、普通河川条例及びこれによる委任の受けたYの定めには、許可の要件又は基準について定められたものはなかった。
普通河川が公共用物⇒その管理権の作用として特定人のために当該敷地を排他的・独占的に継続して使用する権利を特に設定する行為であるという前記の許可については、Y市長の裁量に委ねる趣旨によるものと解され、
前記の許可を求める申請に係る占有が当該普通河川についての災害の発生の防止や流水の正常な機能の維持に妨げにならない場合であっても、Y市長は必ず占用の許可をしなければならないものではなく、
普通河川条例及びこれと以上のような趣旨を共通にするものと解される河川法の目的等を勘案した裁量判断として占有を許可しないことが相当であれば、占有の許可をしないことができる。
Y市長はその許否の判断に当たり、伊東市行政手続条例の規定に従い、許可の判断についての審査基準に関して準用するとされている静岡県河川占用使用許可等事務取扱要領に定められている種々の考慮要素を考慮することも妨げられず、
そこに定められている、占用することで実現しようとする事業の公共性又は公益性の有無又はそれらの程度の評価に係る事情の1つとして当該事業に係る行為が法令又は条例の規定やこれらに基づいてされた処分等に適合するものであるか否かなども考慮することになる。
本件河川の敷地の占用の許否の判断につき、前記考慮要素に従って、Xが本件事業を遂行するために活動を始めてから本件各不許可処分がされるまでの間に生じた事実を詳細に認定し、Y市長が本件各不許可処分をしたことは裁量権の範囲の逸脱又はこれを濫用した違法はない。
●本件各不許可処分に当たってされた理由の提示
Yの定める行政手続条例には、行手法と同様の文言で、申請により求められた許認可等を拒否する処分をする場合には、申請者に対し、同時に、当該処分の理由を示さなければならないと規定。
~
行手法38条の規定の趣旨にのっとり定められたことが明らかにされるなどの規定ぶり⇒行手法の解釈を参考にすることができる。
理由の提示についても、いかなる事実関係に基づきいかなる法規等を適用して当該許認可等が許否されたかを申請者においてその記載自体から了知し得るものでなければならない。
本件各不許可処分においては、審査基準として準用される本件要領に定められた要素の1つに該当しないと判断した旨を説明した旨を説明したにとどまるが、
この審査基準は概括的、抽象的なものであるため、
申請者において求めた許可を拒否する基因となった事実関係を知ることはできず、また、判断の基礎となった事実関係を当然に知り得るような場合に当たるとも認め難い。
⇒理由の提示がされたものとは認め難い。
Xは、不許可に至る経緯となる事実関係自体は把握していると思われる。
but
①
事実を把握していることと
許認可を拒否する処分がされるに当たりその判断の基礎となった事実関係が前記の経過の中のどの事実により、かつどのように評価されたかを知ることは別個の事柄であり、
②行政手続き条例において「同時に」とされている
⇒後の不服申立ての手続において説明が補足されても当然に治癒されるものではない。
判例時2519
| 固定リンク
« 高体連の主宰する講習会の講師としての業務中の災害と公務遂行性(肯定事例) | トップページ | ガソリンスタンドへの車両乗入口の傾斜⇒車体底部が路面に接触⇒通常有すべき安全性が争われた(否定事例) »
「判例」カテゴリの記事
- 懲戒免職処分に先行する自宅待機の間の市職員の給料等請求権(肯定)(2023.05.29)
- 懲戒免職された地方公務員の退職手当不支給処分の取消請求(肯定)(2023.05.29)
- 警察の情報提供が国賠法1条1項に反し違法とされた事案(2023.05.28)
- 食道静脈瘤に対するEVLにおいて、鎮静剤であるミダゾラムの投与が問題となった事案 (過失あり)(2023.05.28)
- インプラント手術での過失(肯定事例)(2023.05.16)
「行政」カテゴリの記事
- 重婚的内縁関係にあった内妻からの遺族厚生年金等の請求(肯定事例)(2023.05.07)
- 船場センタービルの上を通っている阪神高速道路の占有料をめぐる争い(2023.04.26)
- 固定資産評価審査委員会の委員の職務上の注意義務違反を否定した原審の判断に違法があるとされた事例(2023.04.22)
- 生活扶助基準の引下げの改定が違法とされた事例(2023.03.27)
- 幼少期に発効された身体障碍者手帳が「・・・明らかにすることがでできる書類」に当たるとされた事例(2023.03.20)
コメント