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2022年8月 6日 (土)

普通河川の敷地の占有に関する不許可処分の取消請求(肯定事例)

東京高裁R3.4.21

<事案>
X:太陽光エネルギーによる発電事業等を目的とする合同会社。
Y:静岡県伊東市
Xは、本件事業の中で、伊東市普通河川条例4条1項2号の規定に基づきYが管理する普通河川について敷地の占用の許可を求める2つの申請⇒Yの市長が2つの申請を許可しない旨の処分

本件各不許可処分は裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用してされたものであり、所要の処分の理由も提示されていない⇒本件各不許可処分の取消しを求めた。

<判断>
●裁量権の範囲の逸脱又は裁量権の濫用について
Yの定める普通河川条例には、河川の敷地の占有を行うにはY市長の許可を受けるべき旨が定められているが、普通河川条例及びこれによる委任の受けたYの定めには、許可の要件又は基準について定められたものはなかった。
普通河川が公共用物⇒その管理権の作用として特定人のために当該敷地を排他的・独占的に継続して使用する権利を特に設定する行為であるという前記の許可については、Y市長の裁量に委ねる趣旨によるものと解され、
前記の許可を求める申請に係る占有が当該普通河川についての災害の発生の防止や流水の正常な機能の維持に妨げにならない場合であっても、Y市長は必ず占用の許可をしなければならないものではなく、
普通河川条例及びこれと以上のような趣旨を共通にするものと解される河川法の目的等を勘案した裁量判断として占有を許可しないことが相当であれば、占有の許可をしないことができる。
Y市長はその許否の判断に当たり、伊東市行政手続条例の規定に従い、許可の判断についての審査基準に関して準用するとされている静岡県河川占用使用許可等事務取扱要領に定められている種々の考慮要素を考慮することも妨げられず、
そこに定められている、占用することで実現しようとする事業の公共性又は公益性の有無又はそれらの程度の評価に係る事情の1つとして当該事業に係る行為が法令又は条例の規定やこれらに基づいてされた処分等に適合するものであるか否かなども考慮することになる。
本件河川の敷地の占用の許否の判断につき、前記考慮要素に従って、Xが本件事業を遂行するために活動を始めてから本件各不許可処分がされるまでの間に生じた事実を詳細に認定し、Y市長が本件各不許可処分をしたことは裁量権の範囲の逸脱又はこれを濫用した違法はない。

●本件各不許可処分に当たってされた理由の提示
Yの定める行政手続条例には、行手法と同様の文言で、申請により求められた許認可等を拒否する処分をする場合には、申請者に対し、同時に、当該処分の理由を示さなければならないと規定。

行手法38条の規定の趣旨にのっとり定められたことが明らかにされるなどの規定ぶり⇒行手法の解釈を参考にすることができる。
理由の提示についても、いかなる事実関係に基づきいかなる法規等を適用して当該許認可等が許否されたかを申請者においてその記載自体から了知し得るものでなければならない。
本件各不許可処分においては、審査基準として準用される本件要領に定められた要素の1つに該当しないと判断した旨を説明した旨を説明したにとどまるが、
この審査基準は概括的、抽象的なものであるため、
申請者において求めた許可を拒否する基因となった事実関係を知ることはできず、また、判断の基礎となった事実関係を当然に知り得るような場合に当たるとも認め難い。
⇒理由の提示がされたものとは認め難い。

Xは、不許可に至る経緯となる事実関係自体は把握していると思われる。
but

事実を把握していることと
許認可を拒否する処分がされるに当たりその判断の基礎となった事実関係が前記の経過の中のどの事実により、かつどのように評価されたかを知ることは別個の事柄であり、
②行政手続き条例において「同時に」とされている
後の不服申立ての手続において説明が補足されても当然に治癒されるものではない。

判例時2519

大阪のシンプラル法律事務所(弁護士川村真文)HP

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