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2022年7月31日 (日)

調停調書に基づく面会交流について間接強制が認められなかった事例

大阪高裁R3.8.2

<事案>
面会交流調停:
毎月第3土曜日の午前10時から午後6時まで相手方と面会交流させることを内容とする調停成立。その後、間接強制の申立て。

<原審>
相手方と未成年者らを面会交流させるよう命じるとともに、
その不履行につき未成年者1人当たり1回4万円を支払うよう命じる決定。

<解説>
●面会交流と間接強制について
・・・調停調書に面会交流の日時又は頻度、各回の面会交流時間の長さ、未成年者の引渡しの方法等が具体的に定められているなど監護親がなすべき給付の特定に欠けるところがない⇒間接強制を許さない旨の合意が存在するなどの特段の事情がない限り、前記調停調書に基づき監護親に対し間接強制決定をすることができる(最高裁)

●執行裁判所における判断
◎ 民執法は、執行の円滑かつ迅速な進行のため、強制執行手続を判決手続等から組織的に分離し、執行機関は、原則として強制執行を不当ならしめる実態法上の事由の有無については判断しない。

最高裁:
面会交流に関する審判等の債務名義が、子の心情等を踏まえて作成されている⇒その後に子が面会交流を拒絶する意思を示すなどの異なった状況が生じた場合であっても、これにより新たな面会交流条項を定めるための再調停や審判の申立てをすることはともかく、当該債務名義に基づく間接強制決定をすることを妨げない。
◎ but
執行裁判所は、過酷な執行申立てについては、強制執行請求権の濫用(民法1条3項)として却下できると解されている。
間接強制について、債務名義を心理的に圧迫して給付を実現させるもの⇒債務者の人格尊重の理念に反するおそれがある。
履行不能等の事由があっても、債務者から請求異議の訴えや再調停・審判においてしかこれを主張することができないとすると、執行停止が認められない限りは、間接強制金が累積し、過酷な執行となりかねず、こうした金銭的負担は、債務者の生計を圧迫し、子の利益を害するおそれもある。

面会交流させることを命じる内容の債務名義に基づく間接強制の申立てを受理した執行裁判所においては、当事者の提出する資料等から過酷な執行申立てに当たると判断することができる場合には、当該申立を却下すべき。

<判断>
調停成立後に当事者間で行われた未成年者らと相手方との面会交流の状況やその経緯につき詳細に認定。
①新型コロナウイルス感染症の拡大がみられた社会情勢のもとにおいて当事者の合意により本件条項の定めるところから実施日時の変更やビデオ通話の方法に切り替えることなどによって適宜に面会交流が実施されてきており、本件条項に基づく面会交流が何ら実施されなかったと認められるのは令和3年4月分の1回のみ
②債務者が本件条項に定める以外にも未成年者らと相手方との直接的面会交流の場を設けてきたこと、相手方による間接強制決定の申立て後にも当事者間で未成年者らと相手方との面会交流が実施されていること等
③本件条項が面会交流の実施方法の変更につき当事者が誠実に協議する旨を定めているにもかかわらず、面会交流の実施日時や方法の変更についての相手方の対応がその趣旨に合致したものとはいえないものであった。

相手方による間接強制決定の申立てが過酷な執行申立てで、権利の濫用に当たると判断し、これを却下。

<解説>
平成25年最決以降の、面会交流の間接強制についての裁判例。
①~⑦
尚、子の引渡しを命じる審判を債務名義とする間接強制の申立てが権利の濫用に当たると判断された最高裁H31.4.26。

判例時報2518

大阪のシンプラル法律事務所(弁護士川村真文)HP

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