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2022年7月 1日 (金)

新聞の報道記事によるプライバシー侵害(肯定)

静岡地裁R3.5.7

<事案>
覚せい剤取締法違反及び大麻取締法違反で逮捕・勾留⇒実名・逮捕・住所の地番まで掲載⇒嫌疑不十分で不起訴処分
・・プライバシー侵害に当たる⇒不法行為に基づく損害賠償請求として損害金各330万円及び遅延損害金の支払を求めるとともに、
名誉回復措置として被告が発行する新聞紙上に謝罪文を掲載することを求めた。

<判断>
● 原告らが覚せい剤取締法違反及び大麻取締法違反の被疑事実で逮捕されたとの部分だけでなく、
住所も原告らのプライバシーに係る情報として法的保護の対象となる
プライバシーの侵害については、その事実を公表されない法的利益とこれを公表する理由とを比較衡量し、前者が後者に優越する場合に不法行為が成立。

● 住所それ自体は、秘匿されるべき必要性が必ずしも高いものではない
but
①原告らが覚せい剤及び大麻を営利目的で所持していたいとの被疑事実で逮捕されたとの情報と併せて住所の地番までが公表⇒第三者が原告らに対する抗議や嫌がらせ目的、あるいは興味本位等で原告らの住所を訪問したり、郵便物等を送付したりして、原告らの私生活上の平穏が脅かされる可能性も否定できない。
②自宅では4人の未成年の子らと共に生活しており、住所の地番までが公表されることによる私生活上の悪影響は大きい
③被告が発行する新聞が主に静岡県内で購読されている日刊新聞であり、新聞紙上に原告らの住所の地番までが掲載されると、これが静岡県内に広く知れ渡る

本件においては、原告らの住所の地番を秘匿される必要性が高いといえる。

当該記事の新聞への掲載の目的は、重要な公益を図ることにあったと認められる。
前記被疑事実に係る犯罪の重要性及び社会的関心の高さ
⇒原告らが前記被疑事実によって逮捕された事実を原告らの氏名や年齢、職業、居住地域などの原告らを特定するための情報と共に報道する必要性は高い。
but
①居住地域jについては、町名ないし「丁目」等までの住所の一部であっても、氏名や年齢、職業等の他の情報によって被疑者を特定することは可能であり、現に、被疑者の住所全てではなく、「丁目」等の住所の一部を掲載するに止めることを原則としている新聞社も存在している。
②被告自身も、静岡県外の事件は、被疑者の住所の「字」までを掲載することを原則としていること、さらには、原告らがいずれもブラジル国籍であることや、原告らが居住する地域内に原告らと同一又は類似の姓若しくは名の人物がが多数存在するなど当該記事で住所の一部のみの記載に止めた場合に読者において原告らと第第三者とを混同するおそれがあることを基礎づける具体的事情が認められない

本件において、逮捕された被疑者の特定のために、原告らの住所の一部にとどまらず、地番まで掲載する必要が高いとはいい難い。

原告らの住所の地番が秘匿される必要性が高い一方で、
原告らの住所の地番を掲載する必要性が高いとはいい難い

原告らの氏名、年齢、職業、国籍と共に、住所の地番までを記載した上で、原告らが逮捕された事実を報道した記事は、原告のプライバシーを違法に侵害するものとして、不法行為が成立すると認められる⇒原告らの損害賠償請求を33万円及びこれに対する遅延損害金の限度で認容。

<解説>
●プライバシーの概念
判例実務:
他人に知られたくない私生活上の事実又は情報をみだりに開示されない利益又は権利

住所に関して最高裁H15.9.12:
個人識別等を行うための単純な情報であって、その限りにおいては、秘匿されるべき必要性が必ずしも高いものではない。
このような個人情報についても、本人が、自己が欲しない他者にはみだりにこれを開示されたくないと考えることは自然なことであり、そのことへの期待は保護されるべき。

プライバシーに係る情報として法的保護の対象となる。

●表現行為によるプライバシー侵害行為が不法行為に該当するか?
判例:
その事実を公表されない法的利益とこれを公表する理由とを比較衡量し、前者が後者に優越する場合に不法行為が成立(最高裁H15.3.14)。

具体的には、
当該プライバシー情報の性質及び内容、表現行為当時における原告らの年齢や社会的地位、表現行為の目的や意義、当該表現行為において当該プライバシー情報を開示する必要性、当該表現行為によって当該プライバシー情報が伝達される範囲と原告が被る具体的被害の程度、当該表現行為における表現媒体の性質など、
当該プライバシー情報に係る事実を公表されない法的利益とこれを公表する理由に関する諸事情を比較衡量し、
当該プライバシー情報に係る事実を公表されない法的利益がこれを公表する理由に優越するか否かによって判断すべき。

判例時報2515

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