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2022年7月30日 (土)

前訴での判断と異なる主張が信義側上許されないとされた事例

大阪高裁R2.1.31

<事案>
交差点内の自動車同士の衝突事故の加害者Aとの間で自動車保険契約及び自動車損害賠償責任保険契約を締結していた保険会社Xは、被害者Y1の後遺障害が自賠法施行令別表第2の3級3号に該当すると査定⇒Y1に対し、対人賠償保険金合計1702万3890円を、被害者請求に応じて自動車損害賠償責任保険の保険金(自賠責保険金)2219万円を、それぞれ支払った(両保険金を「本件保険金」という。合計3921万3890円)。
その後提起された前件訴訟の控訴審判決で、Y1の後遺障害が9級10号に該当すると認定された上、50%の訴因減額⇒Y1の損害額が2313万6000円と認定され、既に損害額以上の支払いを受けているとして、Y1らの請求が全部棄却され、同判決は確定。

Xは、甲事件主位的請求として
Y1及びその夫であるY2に対し、Y1及びY2が共謀の上、Y1の後遺障害が1級1号に該当すると偽った被害者請求をして、自賠責保険金を詐取したとして、共同不法行為に基づき、損害金1773万円(自賠責保険金2219万円から9級10号相応の616万円を控除した残額1603万円と弁護士費用170万円の合計額)の連帯支払を求め、
Y1に対し、Y1が、本件保険金の合計3921万3890園から前件控訴審判決において認定された損害額2313万6000円を控除した差額1607万7890円を法律上の原因なく利得したとして、悪意の不当利得に基づき、利得額から①で賠償されるべき自賠責保険金残額相当の賠償額1603万円を控除した残額4万7890円の支払を求めた。

①の共同不法行為が認められない場合の予備的請求として、
③Y1に対し、悪意の不当利得に基づき、本件保険金の合計3921万3890円から前件控訴審判決において認定された損害額2313万6000円を控除した差額1607万7890円の支払を求めた。

<争点>
Y1の後遺障害の有無・内容・程度及び損害額について、前件控訴審判決における認定・判断に反する主張をすることが許されるか?

<原審>
前件訴訟の控訴審の口頭弁論においてXがY1の行動調査に関する報告書及びDVDを提出し、その期日において弁論が終結され、判決が言い渡されており、前記行動調査の評価についてY1らにおいて攻防を尽くしたとはいえない。
⇒Y1らが少なくとも前記行動調査の評価を争いY1の後遺障害の有無・内容・程度及び損害額を争うことが信義に反し許されないとはいえない。
再度の事実認定⇒Y1の後遺障害は5級2号に該当

共同不法行為を否定し、Y1の損害は50%の訴因減額を行っても本件保険金の合計金額を超えている⇒請求棄却。

<判断>
訴訟物が異なる⇒前件訴訟の既判力は本件に及ばない
but
前件訴訟と同じく、Y1の後遺障害の有無・内容・程度及び損害額についての争いを中核とするもの
② 交通損害賠償請求事件における被害者の後遺障害の有無・内容・程度及び損害額の争点についての判断は、加害者、被害者、保険会社、自賠責保険や任意保険の保険契約者といった多くの関係者間における法律関係を規律するため、法的安定性の要請が高い

信義則に基づき、前件控訴審判決における認定・判断は最大限尊重されるべきであって、特段の事情もないのにこれを蒸し返すことは許されるべきではない。
①・・・Y1らは前件控訴審判決言渡し当時にはY1の行動調査に関する事実認定を強く争っていたものとは認められない
②証拠によっても、前件控訴審判決に事実誤認があるとは認められない
前記特段の事情があるとは認められない⇒前件控訴審判決における認定・判断に反する主張は、信義則上許されない。

前件控訴審判決の事実認定及び判断を左右すべき的確な証拠もない。

● 共同不法行為の成否:
ア:Y1が後遺障害について虚偽の申告を行い、検査においても作為をしたこと
イ:Y2がY1の日常生活状況につき内容虚偽の日常生活状況報告表を作成したこと
を違法行為として認定。
but
これらの違法行為と、
アを踏まえてされた意思による自賠責後遺障害診断書の作成、
イを踏まえてされた代理人弁護士による意見書の作成、
その後の被害者請求を受けて、損害保険料率算出機構のはんだを前提としてされたXによる後遺障害3級3号該当との判断及びこれによる自賠責保険金の支払との間には、相当因果関係が認められない
⇒共同不法行為に基づく損害賠償請求を棄却。
but
Y1の悪意の不当利得は認め、Y1に対して1607万7890円の支払を求める甲事件予備的請求を認容。

<解説>
判決の理由中の判断に既判力を認めないのが判例・通説。
既判力類似の効力についても、最高裁はこれを否定。
but
実質的に前件の蒸し返しである後訴の請求や主張は信義則上許されないとする裁判例が存在

本件:
交通損害賠償請求事件では関係者が多く法的安定性を図る要請が高いことを要素として指摘した点、信義則を根拠に主張を排斥しつつ、改めに証拠に照らして検討し、前件控訴審判決における認定・判断によるべきとした点に特色。

判例時報2518

大阪のシンプラル法律事務所(弁護士川村真文)HP

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