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2022年7月21日 (木)

交差点での街灯が点灯せず視認性が低下⇒営造物の設置・管理の瑕疵と事故との因果関係肯定事例

神戸地裁R3.1.22

<事案>
普通乗用自動車を運転していたXが、Y(兵庫県西宮市)管理の市道交差点を左折した際、中央分離帯に乗り上げて衝突した事故につき、本件交差点及び本件中央分離帯の設置・管理に瑕疵があった⇒XがYに対し、国賠法2条1項に基づき損害賠償を求めた。

<判断>
本件中央分離帯は、その設置について関係法令に違反していることは認められず、本件事故の原因は本件交差点の視認性の低下にある⇒瑕疵はない。

本件街灯については、本件事故当時、いわゆる球切れの状態で点灯しておらず、その設置の場所から本件交差点内を照らして夜間の視認性を向上させる機能を有すべきものであるところ、本件事故当時、この通常有すべき機能・安全性を有していなかった。
⇒本件街灯の設置・管理に瑕疵があると判断し、この瑕疵と本件事故との因果関係を認め、X7割、Y3割で過失相殺をした上、Xの請求を一部認容。
(←自動車の前照灯を点灯させていれば一定程度の照度を確保することができたと思われ、Xが前方注視義務等を尽くしていれば、事故を避け得た)

<解説>
● 国賠法2条1項の「瑕疵」:
国賠法2条1項の営造物の設置又は管理の瑕疵とは営造物が通常有すべき安全性を欠いていることをいい、当該営造物の使用に関連して事故が発生し、被害が生じた場合において、当該営造物の設置又は管理に瑕疵があったとみられるかどうかは、その事故当時における当該営造物の構造、用法、場所的環境、利用状況等諸般の事情を総合考慮して具体的個別的に判断すべき。

● 中央分離帯の設置について、道路構造令に規定。
but反射材取付けに関する規定はない。
街灯の設置に関しては、国土交通省が定める道路照明施設設置基準に基づいて設置されている。
同基準では、「交差点の照明は、道路照明の一般的効果に加えて、これに接近してくる自動車の運転者に対してその存在を示し、交差点内および交差点付近の状況がわかるようにするものとする。」と規定(同基準第4章局部照明4-2交差点)。

交差点内を照らす街灯等は、交差点内および付近の状況を自動車の運転者が把握できる機能を有すべきものとされる。

● 尚、ここで問題とされる「通常有すべき安全性」とは交差点としての安全性であり、瑕疵を云々する営造物は、街灯を含めたところの交差点全体と捉えるべきでないかという疑問。

● 照明に係る設置・管理(未設置も含める)の瑕疵が問題となった最近の下級審の裁判例。

判例時報2517

大阪のシンプラル法律事務所(弁護士川村真文)HP

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