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2022年7月25日 (月)

受給年金等の振込先口座の差押えで、不当利得返還義務が認められた事案

神戸地裁尼崎支部R3.8.2

<事案>
Xが、金融業者であるYの申立てにより、2回にわたり、年金等の振込先口座の預金債権の差押えを受け、2回目の差押えについては、民執法153条に基づく差押禁止債権の範囲変更の申立てにより差押命令の取消決定を得た。
but
1回目の差押えについては取立が完了

1回目の差押えについては、取立金の不当利得返還及び民法704条前段所定の利息の支払請求を、
2回目の差押えについては、不法行為に基づき、差押命令の取消しに要した弁護士費用の損害賠償請求を行った。

<判断>
いずれの差押えも、預金残高がごくわずかであったところに年金等が振り込まれた直後というタイミングで、その効力が発生し、ほぼ年金等の振込額のみによって構成されている状態の預金債権の全額を差し押さえる結果となったもの⇒そのような結果は、実質的に、年金等の受給権自体を差し押さえたに等しく、差押禁止の趣旨に反する違法なもの。
⇒1回目の差押えに係る取立金の受領は法律上の原因を欠いている。

Yが、各差押えを申立て時点で、前記のような差押禁止債権の属性承継に関わる事情を知っていた、あるいは、知り得たと認めるに足りる証拠はない

1回目の差押えについての悪意の受益者該当性、
2回目の差押えについての不法行為該当性
は否定。

<解説>
最高裁H10.2.10:
金融機関による、預金者に対する債権と、国民年金等が振り込まれた口座の預金債権との相殺の可否について、振り込まれた年金等は受給者の一般財産に混入し、年金等として識別できなくなっており、預金債権は差押等禁止債権の属性を承継していない
⇒相殺は許されるものとした第1審及び控訴審の判断を是認。

東京地裁H15.6.28:
①債権者が、債務者が年金を預け入れた口座の貯金債権を差し押さえた事案において、預貯金の原資が年金であることの識別・特定が可能であるときは年金自体に対する差押えと同視すべき
年金受給者が別の財産を費消して生計を立てていると推認し得る証拠がない⇒差押えが許されるということもできない。

不当利得返還請求を認め、
債権者が悪意の受益者に当たるのは訴訟提起日以後に限られる。

大阪地裁H10.9.20:
①年金受給権の給付目的を承継しない貯金債権まで差押禁止債権とすることは、法の明文の規定なく責任財産から除外される財産を認めることになり、取引の安全を害する。
②年金を原資とした貯金債権であっても、受給者が年金以外に財産を所有して生計を立てている場合などには差押えを禁止する必要はない。

不当利得返還請求及び不法行為に基づく損害賠償請求を否定。

判例時報2517

大阪のシンプラル法律事務所(弁護士川村真文)HP

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