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2022年6月14日 (火)

証券会社の新規委託者保護義務違反、過当取引が認められた事例

名古屋地裁R3.5.20

<事案>
個人投資家であるXが、証券会社であるY1に委託して行った取引所株価指数証拠金取引により被った損害について、
Y1に対しては使用者責任又は債務不履行責任に基づき
Y1の従業員であり支店長であったY2に対しては共同不法行為に基づき、
損害賠償を請求。

Xは、会社を経営する60歳代の男性であり、
Y1の従業員の勧誘を受け、くりっく株365と称する取引所株か指数証拠金取引(本件取引)の取引口座を開設し、平成27年11月から平成28年9月まで約10か月にわたり本件取引を行い、その結果、売買損失額382万円余りと手数料額412万円余りによる差し引き損失額795万円余りから、金利・配当相当額を控除した、791万円余りの損失を被った。

Xは、Y2を含むY1の従業員らによる本件取引の勧誘は、
①適合性原則違反、
②説明義務違反、
③新規委託者保護義務違反、
④指導助言義務違反、
⑤実質的一任売買、
⑥過当取引
に該当し違法であるなどと主張。

<判断>
●①について
最高裁H17.7.14を参照し、
本件取引の仕組みには複雑な面があり、Xが本件取引やそれに類似する取引の知識及び経験を有していなかったとことを考慮しても、
Xの日経平均株価に関する知識、知的能力、投資意向、財産状態に照らせば、
Xがおよそ本件取引を自己責任で行う適性を欠き、取引市場から排除されるべき者であったとはいえない。
⇒適合性原則違反には当たらない。

●②について
①勧誘時の交付書面や説明の内容
②口座開設申込時にXが提出した「取引所株価指数証拠金取引状況確認書兼理解度アンケート」の記入内容
③電話審査の際のXの応答内容等

Xは本件取引の基本的な仕組みとリスクについては説明を受けたものと認められ、その説明の程度が説明義務に違反するほどに不十分であったとは認められない
⇒説明義務違反には当たらない。

●③について
本件取引がハイリスク・ハイリターンの取引であり、仕組みに複雑な面がある⇒新規委託者が過大な取引を行えば、いたずらに損害が拡大し不測の損害を被る可能性が高い
②一般投資家から取引の委託を受ける取引参加者は一般投資家に比して本件取引の仕組み及びリスクを熟知し、かつ、一般投資家から徴収する手数料で利益を得ている。
③Y1が提供するコンサルティングコースは、顧客が高額な手数料を支払うことで専任の担当者から相場情報の提供や運用アドバイスを得られるなどとするコース

同コースにおいて、取引参加者又はその従業員は、取引に習熟していない新規委託者に対し、無理のない金額の範囲内での取引を勧め、限度を超えた取引をするをすることのないよう助言すべきであり、短期間に相応の建玉枚数の範囲を超えた頻繁な取引を勧誘したり、また、損失を回避すべく、さらに過大な取引を継続して損失を重ね、次第に深みにはまっていくような事態が生じるような取引を勧誘してはならない義務(新規委託者保護義務)を負い、取引参加者又はその従業員がこれに反する行為をした場合には不法行為を構成する。
Xは保護すべき新新規委託者に当たる。
本件取引の内容を詳細に認定し、これをXの投資意向と理解の程度に照らすと、Y1の従業員らによる本件取引の勧誘は、新規委託者保護義務違反に当たり、不法行為が成立。

●④について、実質一任売買は否定。

●⑤について
①本件取引が上記(争点③)のものであった
②Xが最初の証拠金を入金した僅か2日後に追加入金を勧誘し、その後も、約10日間のうちに2度追加入金を勧誘
③ほとんどの取引がY1の従業員らの提案をXが受け入れる形で決められている

Y1の従業員らは、本件取引について支配を及ぼし、Xの信用を濫用して自己の利益を図り、Xの投資知識・経験、投資意向等に照らして過当な取引を勧誘したと認められる⇒過当取引として違法。

 ⇒
Y1の従業員らによる本件取引の勧誘については、新規委託者保護銀無違反及び過当取引が認められる⇒Y1は使用者責任に基づき、Y2は共同不法行為に基づき、連帯して損害賠償責任を負う。
791万円余りの損害につき、4割の過失相殺を行い、弁護士費用47万円を加え、Yらに対し、522万29円の連帯支払を命じた。

<解説>
新規委託者保護義務は、従前より商品先物取引等で肯定されている。

過当取引
は、顧客の投資経験、投資目的、保有資産規模等に照らして個別的に判断されているが、従来、判断基準として、
①取引の過度性、
②口座支配(取引の主導性)、
③悪質性(欺罔の意図)が挙げられている。

裁判例。

判例時報2513

大阪のシンプラル法律事務所(弁護士川村真文)HP
真の再生のために(事業民事再生・個人再生・多重債務整理・自己破産)用HP(大阪のシンプラル法律事務所(弁護士川村真文))

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