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2022年6月28日 (火)

婚姻費用分担事件で義務者が失職した事案

東京高裁R3.4.21

<原審>
Yは退職して無職、無収入であるが、令和1年分の給与収入の5割程度の稼働能力を有する⇒月額4万円の支払等を命じた。

<判断>
婚姻費用を分担すべき義務者の収入は、現に得ている実収入によるもが原則
失職した義務者の収入について、潜在的稼働能力に基づく収入の認定をするのが許されるには、就労が制限される客観的、合理的事情がないのに主観的な事情によって本来の稼働能力を発揮しておらず、そのことが婚姻費用の分担における権利者との関係で公平に反すると評価される特段の事情がある場合でなければならない。

Yは、・・・自殺企図による精神錯乱のため警察官の保護を受け、同月15日に職場を自主退職し、主治医の意見書によれば、就労は現状では困難。
Yは、自主退職後、就職活動をして雇用保険の給付を受けたことはなく、現在でも就労しておらず、令和3年3月15日付けで、精神障害者保険福祉手帳の交付申請をしている。

Yにおいて、就労が制限される客観的、合理的事情がないのに主観的な事情によって本来の稼働能力を発揮しておらず、そのことが婚姻費用の分担におけるXとの関係で公平に反すると評価される特段の事情があるとは認められない。

Xは、少なくともYの現状の状態の下では、Yに対し、婚姻費用の分担金の支払を求めることはできないから、Xの婚姻費用分担の申立ては却下を免れない。

<解説>
養育費に関する東京高裁:
義務者は、養育費の減額を求める家事調停係属中の段階で失職し、就職活動をして雇用保険を受給していたが、調停不成立となって原審判がされた時点でも就職できなかった事案において、失職してまもなくの時期に、賃金センサスを用いて潜在的稼働能力があると認定して養育費を算定した原審に対し、
養育費は、当事者が現に得ている実収入に基づき算定するのが原則であり、義務者が無職であったり、低額の収入しか得ていないときは、就労が制限される客観的、合理的事情がないのに単に労働意欲を欠いているなどの主観的な事情によって本来の稼働能力を発揮しておらず、そのことが養育費の分担における権利者との関係で公平に反すると評価される場合に初めて、義務者が本来の稼働能力(潜在的稼働能力)を発揮したとしたら得られるであろう収入を諸般の事情から推認し、これを養育費算定の基礎とすることが許されるというべき。
原審は、こうした点について十分に審理しているとはいえない⇒原審判を取り消して、差し戻した。

判例時報2515

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