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2022年6月16日 (木)

会計限定監査役の任務違反

最高裁R3.7.19

<事案>
株式会社であるXが、監査の範囲が会計に関するものに限定されている監査役であったYに対し、Yがその任務を怠ったことにより、Xの従業員による継続的な横領の発覚が遅れて損害が生じた⇒会社法423条1項に基づき、損害賠償を請求。

<原審>
会計帳簿の信頼性欠如が容易に判明可能であったなどの特段の事情がない限り、会計限定監査役は会計帳簿の内容を信頼して監査することで足りる。
本件においては、前記の特段の事情はなく、監査において計算書類等に表示された情報が会計帳簿の内容に合致していることを確認したYはその任務を怠ってはいない。
⇒請求棄却。

<判断>
会計限定監査役は、計算書類等の監査を行うに当たり、会計帳簿が信頼性を欠くものであることが明らかでない場合であっても、当該掲載書類等に表示された情報が会計帳簿の内容に合致していることを確認しさえすれば、常にその任務を尽くしたといえるものではない。
⇒原判決を破棄。

Xにおける本件口座に係る預金の重要性の程度、その管理状況等の諸事情に照らしてYが適切な方法により監査を行ったといえるか否かにつき更に審理を尽くして判断する必要がある。
⇒事件を原審に差し戻した。

<規定>
会社法 第三八九条(定款の定めによる監査範囲の限定)
公開会社でない株式会社(監査役会設置会社及び会計監査人設置会社を除く。)は、第三百八十一条第一項の規定にかかわらず、その監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨を定款で定めることができる。
2前項の規定による定款の定めがある株式会社の監査役は、法務省令で定めるところにより、監査報告を作成しなければならない。

4第二項の監査役は、いつでも、次に掲げるものの閲覧及び謄写をし、又は取締役及び会計参与並びに支配人その他の使用人に対して会計に関する報告を求めることができる。
一 会計帳簿又はこれに関する資料が書面をもって作成されているときは、当該書面
二 会計帳簿又はこれに関する資料が電磁的記録をもって作成されているときは、当該電磁的記録に記録された事項を法務省令で定める方法により表示したもの
5第二項の監査役は、その職務を行うため必要があるときは、株式会社の子会社に対して会計に関する報告を求め、又は株式会社若しくはその子会社の業務及び財産の状況の調査をすることができる

<解説>
学説:監査役は、監査において、その程度はともかく計算書類等の適正性を確認する必要がある。

最高裁:
監査役の監査を受けた計算書類等の役割や会計限定監査役に付与された権限(会社法389条4項、5項等)⇒会計帳簿の信頼性を欠くものであることが明らかではない場合であっても、前記権限を行使して、会計帳簿の信用性の確認やその基礎資料を確認すべき場合がある。

差戻審において、本件口座の重要性、その管理状況等及びそれについての被告の認識等について審理すべき

本件における会計限定監査役の任務懈怠の有無を判断する際の考慮要素を指摘したものであるところ、個別具体的な事実関係を踏まえて、任務懈怠の有無を判断すべきとしたものと解される。

判例時報2514

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