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2022年6月13日 (月)

死因贈与契約での預金債権の取得等

東京地裁R3.8.17

<事案>
Aは、令和1年9月5日、姪であるBとの間で、次の内容の負担付死因贈与契約を締結。
①Aは、自己の所有する全部の財産をBに贈与することを約し、Bはこれを受諾。
②Aの死亡と同時に贈与財産の所有権は当然Bに移転。
③Bは、死因贈与を受けた総財産のうち、公租公課を含むすべての経費を控除した額の一部を2名の物に500万円ずつ寄付する。
④Aは司法書士法人であるXを本件死因贈与契約の執行者に指定。
Aは、令和1年10月に死亡。

<請求>
Xは、Aとの本件預金契約を締結していた銀行であるYに対し、948万4960円の払戻し及び遅延損害金の支払を求めた。
vs.
Yの主張:
①公正証書によらない死因贈与契約では執行者を指定できない
②Xは、預金の払戻権限を有しない⇒本件払戻請求訴訟の当事者適格を有しない
③本件預金契約には譲渡禁止特約が附されている⇒預金債権を死因贈与する部分は無効
④Yによる払戻請求の拒絶は信義則違反でない

<判断>
●①について
死因贈与契約においては、その性質に反しない限り遺贈に関する規定が準用(民法554条)⇒死因贈与契約の贈与者は、当該契約が公正証書によるか否かを問わず、執行者を定めることができる。

●②について
遺贈に関する規定が準用される死因贈与契約において、Yに対して預金の払戻請求をすることは、死因贈与の執行に必要な行為として、Xの権限に含まれる。⇒Xの原告適格肯定。

●③について
AとYは、本件預金契約について譲渡禁止特約を締結⇒受贈者であるBは原則として本件死因贈与契約によって預金債権を取得し得ない。
債務者である金融機関が預貯金債権の遺贈について譲渡禁止特約による無効が主張できないのは、遺贈が遺言者の遺言という単独行為によってされる権利の処分であるから⇒契約である死因贈与という本件の事情において民法554条により遺贈の規定は準用されない。

●④について
YがXに預金を払い戻した場合、
①B以外の相続人らから権利主張されることによって相続紛争に巻き込まれる危険性があり、
②本件死因贈与契約が有効でないとして払戻しが過誤とされる危険性もあり、
③XはB以外の相続人らから払戻しの同意を得ることが可能
Yによる払戻請求の拒絶が信義則に反するとはいえない。

<規定>
民法 第五五四条(死因贈与)
贈与者の死亡によって効力を生ずる贈与については、その性質に反しない限り、遺贈に関する規定を準用する。

<解説>
死因贈与:贈与差の死亡によって効力を生じる贈与。
単独行為である遺贈とは異なるが、死後に、相続人の出捐によって受贈者に利得を得させる⇒実質的には遺贈に近似する性格をもつ⇒民法554条。

●通説:
遺言の方式、遺言能力、遺贈の承認・放棄に関する規定は準用されない。

死因贈与と遺贈は死後処分であることは同じであるが、前者が契約であり、後者は単独行為⇒死因贈与が死後処分であることにもとづく規定は準用されるが、単独行為であることにもとづく規定は準用されない
最高裁昭和32.5.21:民法554条は死因贈与契約の効力については遺贈に関する規定に従うべきことを規定しただけで、契約の方式についても遺言の方式に関する規定に従うべきことを定めたものではない。

●遺言執行者の選任に関する規定(民法1010条)が死因贈与に準用されるか?
実務:積極説

●そもそもBが預金債権を取得できない⇒執行者であるXがYに当該預金の払戻請求をすることができるかには疑問がある。
本件事案が、死因贈与でなく、遺贈としてなされた場合には、いわゆる清算型遺贈の類型に属する。
清算型遺贈においては、受遺者が遺贈の対象となった預金債権の取得者とはならないが、遺言執行者は、当該預金の払戻しをし、払戻金から公租公課を控除し、寄付を行い、残金を受遺者に交付。⇒遺言執行者は預金の払戻しを請求することができる。
本件の争点は、本件死因贈与契約においても同様に処理することが可能であるかの問題であった(解説者)。

判例時報2513

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