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2022年6月25日 (土)

建設中の産業廃棄物の安定型最終処分場について建設、使用及び操業禁止の仮処分命令の申立てが認められた事例

広島地裁R3.3.25

<事案>
事業協同組合であるYが広島県から設置許可を得て産業廃棄物の安定型最終処分場(本件処分場)を建設中。
周辺住民等であるXら518名が、本件処分場の建設、使用及び操業により、井戸水、水道水及び河川の水が有害物質によって汚染され、あるいは土砂災害を誘発するおそれがある⇒人格権等に基づき、本件処分場の建設、使用及び操業禁止の仮処分命令を求めた。

<主張>
Xら:
① 安定5品目以外の廃棄物が付着・混入するおそれがある
②安定5品目の埋立てにより有害物質が漏出するおそれがある
③それにより、井戸水、水道水、河川の水が汚染(それにより農作物や川魚が汚染)されるおそれがある
④土砂災害が発生するおそれがある

<判断>
被全権利について、
人が飲用水に有害物質が含まれるおそれがあることにより抱くことになる「自らが健康被害を受けるのではないかという不安」が「主観的なものにとどまらず、社会通念上も合理的なものと評価される場合には」、「生命、身体、健康についての身体的人格権と密接に関連する精神的人格権の一種としての平穏生活権」を侵害するものであり、原因行為の差止めを求める根拠(被保全権利)となり得る。

平穏生活権の侵害についての主張立証責任は、民事訴訟の一般原則により債権者ら(Xら)が負う。

安定5品目以外の廃棄物の付着・混入を受入れ側で防止することが困難であるのに対し、その防止のためにYが掲げる方策は不十分⇒安定5品目以外の廃棄物が付着・混入するおそれがある。
主としてXらが提出した専門家の意見書をもとに、推定される予定地周辺の岩盤や断層の状況等⇒本件処分場から漏出した水が予定地付近の4井戸の水源に混入し井戸水が汚染されるおそれがあると認定し、他方で、Yは住民の健康被害の不安を払しょくするために井戸の利用状況等について十分な調査を尽くしていない

Xらのうち4井戸の井戸水を飲用に供している9名について、
健康被害への不安感は社会通念上合理的なものであり、
本件処分場の操業が開始されれば「著しい損害又は急迫の危険と評価される程度の平穏生活権侵害をもたらすおそれがある」

保全の必要性も肯定した上で、
9名に担保を立てさせないで、本件処分場の建設等の仮の差止めを認めた。
9名以外の、他の井戸水を利用するXら、水道水を利用するXら、河川の水による健康被害のおそれを主張するXら、土砂災害による被害のおそれを主張するXらの申立てについては、被保全権利の疎明がないとして認めなかった。

<解説>
●人格権に基づく差止請求権。
操業行為の違法性については、
人の生命、身体に対する加害のおそれが認められれば直ちに違法性を認めるべきとする裁判例もある一方、
侵害行為の態様と程度、その公共性・重要性、被害防止のための対策の内容等も考慮して、侵害行為が受忍限度を超える場合に違法性を認めるとする裁判例が多い。

被害立証については、被害者と事業者との立証負担の公平の観点から、被害者の立証責任の軽減を図る裁判例も見られる。
本決定は、身体的人格権と密接に関連する精神的人格権の一種としての平穏生活権が被保全権利となり得るとしている。
平穏な生活に係る利益ないし権利は判例で承認されているものの、その具体的内容は事案によって様々であり、外延は明確ではない。

本決定:平穏生活権を「精神的人格権」の一種と分類したことや、「健康被害への不安感」を平穏生活権の侵害と捉えて差止請求権の根拠とした。

●産業廃棄物の最終処分場:
①遮断型
②管理型
③安定型:有害物質や有害物の付着がなく、雨水にさらされても化学変化を起こさない安定5品目(安定型産業廃棄物)の埋立処分を目的とするもの。
⇒法令上他の2者で求められる遮水工や水処理施設の設置は求められていない。
but
従前から、有害物質を含んだ浸出水による水質汚濁が問題視されている。

判例時報2514

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