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2022年6月13日 (月)

実父の遺産分割協議につき、特別代理人の義務が争われた事案

東京地裁R2.12.25

<事案>
Aは妻Yとの間に長女X(未成年)及び長男F(未成年)をもうけていたが、平成6年6月に交通事故で死亡。

Aの母Bは家業の株式会社を取り仕切っておりAもその会社に勤務。
平成6年10月23日、Bが会社の顧問税理士に指示してAの遺産分割協議書を作成。

Yが押印し、Bが長女Xの親権者として、またAの兄Cが長男Fの親権者として、いずれも親権者でないにもかかわらず、それぞれ押印。

同年11月21日、Yの申立てにより札幌家裁は、長女Xの特別代理人としてBを、長男Fの特別代理人としてCを、それぞれ選任する審判。
同審判には、本件遺産分割協議書と同一内容の遺産分割協議書案が添付され、審判主文は、「被相続人亡Aの遺産を別紙遺産分割協議書(案)のとおり分割協議するにつき、未成年者らの特別代理人として次の者を選任する。」とされた。

Xは、Y及び長男Fを相手方として調停を申し立て⇒不成立⇒Yを相手に本件訴えを提起し
①本件遺産分割協議書に係る遺産分割協議は不成立である、
②本件遺産分割協議のときにはB及びCにつき特別代理人の審判はなく、同人らは無権代理人として行為をしたものであり、無効である
③特別代理人が子の利益を図ることなく親(親権者)の利益を図るための意思表示をし、子の遺留分さえ保護されない本件遺産分割協議書に同意することは、遺産分割制度、遺留分制度の趣旨に反し、無効である

Yに対し、不法行為に基づく損害賠償、不当利得返還請求を求めた。

<判断>
●①について
遺産分割協議の合意が存在⇒遺産分割協議が不成立とはいえない。
どのような分割方法が子の利益に資するかは、相続財産の内容、その時点における子の年齢や生活状況、今後見込まれる親権者による子の養育監護の状況など個別具体的な種々の事情により異なり、子にその法定相続分相当以上の相続財産を取得させることが、常に子の利益に資するということはできない⇒本件遺産分割協議において未成年者の子の特別代理人に常に当該子にその法定相続分相当以上の相続財産を取得させるよう協議する義務はない。

●②について
特別代理人選任審判は、B及びCがそれぞれX、長男Fの特別代理人としての本件遺産分割協議書記載のとおりの協議をすることが未成年者のであるX及び長男Fの利益に反するものではないと判断したものといえる
②本件遺産分割協議から前記特別代理人選任審判までの約1か月の間に特別代理人選任の当否に関する事情の変更があったとはいえない
③B及びCは前記特別代理人選任審判の告知を受けたところ、本件遺産分割協議について黙示の追認をしたものと評価することができる
⇒無権代理人の主張を排斥。

●③について
遺留分を侵害する遺贈等が当然に無効となるわけではなく、遺留分を侵害された者が遺留分減殺請求権を行使することによって初めて同侵害された遺留分を回復することができる
⇒遺産分割協議において各相続人の遺留分を確保することが必須とはいえず、一部の相続人の遺留分が確保されていないことをもって、当該遺産分割協議の効力を否定することはできない。

親権者とその親権に服する未成年者の子を当事者とする遺産分割協議においては、子にその法定相続分以上の相続財産を取得させることが常に子の利益に資するということはできず、遺留分についても同様
⇒遺産分割協議において、未成年者の子の特別代理人には、常に当該子にその法定相続分相当額以上の相続財産を取得させるよう協議する義務も、常に当該子の遺留分相当の相続財産を確保する義務もない。

<解説>
親権者と子との間に利益相反がある場合の特別代理人(民法826条1項)は、特定の行為につき個別的に選任され、その権限は、家庭裁判所選任に関する審判の趣旨によって定まる。

判例時報2513

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