採石権の存続期間の更新決定
東京高裁R3.2.18
<事案>
採石法28条:採石権の存続期間の更新を希望する者は、土地の所有者との協議がととのわないときは、経済産業局長の決定を申請することができる旨を規定。
本件:
採石業者である原告が、土地の所有者との間で存続期間を更新する旨の合意ができなかった⇒中国経済産業局長に対し、同条に基づき、対象と地に設置された採石権の存続期間を更新するとの決定を求める申請⇒同申請を棄却する処分⇒同法39条1項に基づき、公害等調整委員会に対し、当該処分の取消しを求める裁定を申請⇒裁定委員会がこれを棄却⇒その取消しを求める訴えを提起。
<解説>
裁定に対する訴えは東京高裁の専属管轄とされ(土地利用調整法57条)、公害等調整委員会は事件記録を裁判所に送付(同法51条)。
裁定委員会の認定した事実は、これを立証する実質的な証拠があるときは、裁判所を拘束し、実質的な証拠の有無は、裁判所が判断(いわゆる「実質的証拠法則」同法52条1項、2項)、当該事件に関係のある新しい証拠(裁定委員会の事実認定に関する証拠)の申出も制限される(同法53条)。
~
不服裁定には、裁判の第一審的機能が与えられ、裁定取消訴訟の審理は通常の抗告訴訟の審理とは異なっている(土地利用調整法の諸規定は行訴法1条にいう「他の法律に特別の定めがある場合」に当たる)。
<判断>
採石法28条は、土地の所有者の財産権を尊重する一方、岩石の採取の事業が社会資本の整備に不可欠の資源であることから、岩石資源の開発が社会的、経済的に必要な状況にあるにもかかわらず、対象となる土地の所有者の意向等により採石権の存続期間の更新がされないことにより社会資本の整備に支障を来すことのないように、公共の利益を確保することを目的として、土地所有者との間で採石権の存続期間を更新する合意がととのわない場合においても採石権を存続させる道を開いたもの。
⇒経済産業局長が更新決定をすることができるのは、土地所有権の制限を正当化し得るに足りる公共の利益がある場合に限られる。
ex.岩石資源の需給がひっ迫し、当該地域の岩石製品市場の需要を賄うに足りる供給量を確保し得ない状況にある、又は現時点において前記状況にないが、近い将来これを確保し得なくなる蓋然性が相当高度な状況にあるため、対象土地の所有権を制限してでも岩石資源を確保することが公共の利益の観点から必要である場合。
本件裁定は実質的証拠に基づくものであり、原告の採石権の存続期間を更新する決定がなされなければ、現在又は近い将来の砕石の供給を確保し得ない状況になるとは考え難い⇒裁定申請を棄却した本件裁定に法令に違反する点はなく、むしろ正当。
判例時報2513
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