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2022年6月 7日 (火)

暴対法31条の2の「威力を利用」が問題となった事案

東京高裁R3.3.22

<事案>
Xが、指定暴力団a会に所属するAが中心となって行われた振込詐欺によって1150万円を詐取された⇒指定暴力団a会の会長であったYに対し、暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律(暴対法)31条の2及び民法715条に基づき、詐取損害金のほか慰謝料等合計2150万円及び遅延損害金の支払を求めた、。

<争点>
本件詐欺がAの威力利用資金獲得行為を行うについてされたものであるか否か

<原審>
Yの暴対法31条の2に基づく責任について、威力利用資金獲得行為は、ある程度幅の広い行為態様を意味す。
but
①詐欺グループの活動の準備行為がどのように行われたか明らかでなく、Aに協力した組織がaや指定暴力団であったとはいえず、
②Aが、詐欺グループ内で指揮命令系統を維持確保し、規律の実効性を高めるためにa会や指定暴力団の威力を利用して本件詐欺をしたと認めるに足る証拠はない。

民法715条の責任について、本件詐欺によって得た収益金がa会傘下の暴力団に納められた事実や、Yがこれを認識しつつ認容していた事実はない
⇒本件詐欺がa回の事業として行われたものと認めることはできない。

<判断>
Yの責任を認めて、Xの請求を一部認容。

(1)暴対法31条の2の趣旨は、民法715条の規定によって指定暴力団の代表者等に対して損害賠償責任を追及する場合に主張立証に困難を伴うことを考慮して、主張立証の負担を軽減するもの
(2)同条本文の「威力を利用」する行為については、資金獲得のために威力を利用するものであればこれに含まれ、被害者又は共犯者に対して威力が示されることは必要ではない。
(3)「威力を利用して」とは、当該指定暴力団に所属していることにより資金獲得行為を効果的に行うための影響力又は便益を利用することをいい、当該指定暴力団としての地位と資金獲得行為とが結びついている一切の場合をいう
(4)本件資金獲得行為が指定暴力団の威力を利用して行われたかについては、
①本件詐欺を含む一連の詐欺行為の準備として、Aが、電話を架ける相手の名簿、電話の架け方等に関するマニュアル及び詐欺に使用する携帯電話機等を全て手配し、拠点となる事務所の移転先を用意していたことから、何らかの組織力を背景にしていたものと推認されること、
それがa会である可能性は十分にあり反社会的な組織力を背景とした行為であることは本件共犯者らにも容易に認識し得るものであったこと、
③Aには、暴力的要求行為に代わる資金獲得行為を行う必要があったこと、
④Aは、本件資金獲得行為を行うに際し、暴走族関係の知り合いであるCに声を掛け、Cは、Aがa会系の暴力団員であることを認識し、本件共犯者らは、本件資金獲得行為の背景にある組織がAの所属する暴力団である可能性が高いことを認識していたと推認されること、
Aがa会系の暴力団員である事実が、Cから本件共犯者らに伝わることは当然予見できたこと、
本件共犯者らは、逮捕後、A所属の暴力団からの報復を恐れてAに関する供述を拒んでいること、

以上を総合すると、Aの内部統制及び口止めは、本件資金獲得行為について、暴力団であるa会の威力を利用する行為に該当し、Aには威力利用についての故意も認められる
Aの行った本件資金獲得行為は、暴対法31条の2本文規定の威力利用資金獲得行為に該当する。

<規定>
暴対法 第三一条の二(威力利用資金獲得行為に係る損害賠償責任)
指定暴力団の代表者等は、当該指定暴力団の指定暴力団員が威力利用資金獲得行為(当該指定暴力団の威力を利用して生計の維持、財産の形成若しくは事業の遂行のための資金を得、又は当該資金を得るために必要な地位を得る行為をいう。以下この条において同じ。)を行うについて他人の生命、身体又は財産を侵害したときは、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。ただし、次に掲げる場合は、この限りでない。
一 当該代表者等が当該代表者等以外の当該指定暴力団の指定暴力団員が行う威力利用資金獲得行為により直接又は間接にその生計の維持、財産の形成若しくは事業の遂行のための資金を得、又は当該資金を得るために必要な地位を得ることがないとき。
二 当該威力利用資金獲得行為が、当該指定暴力団の指定暴力団員以外の者が専ら自己の利益を図る目的で当該指定暴力団員に対し強要したことによって行われたものであり、かつ、当該威力利用資金獲得行為が行われたことにつき当該代表者等に過失がないとき。

<解説>
暴対法31条の2は、 指定暴力団による威力利用資金獲得行為が行われた際の指定暴力団の代表者等に対する損害賠償責任を認めるものとして規定。

民法715条によって、指定暴力団の代表者等に対する損害賠償請求⇒請求者側において、当該行為の事業執行性を主張立証する必要。
but
請求者側で、指定暴力団の事業執行性を主張立証することは困難。
⇒指定暴力団により威力利用資金獲得行為に際して、被害が生じたときは、事業執行性の主張立証責任の負担を軽減。

but
威力利用資金獲得行為以外の行為によって、指定暴力団の代表者等に対する責任追及を行う場合は、民法715条の規定によるしかない。

判例時報2513

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