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2022年6月11日 (土)

芸能人養成スクールの入学時諸費用不返還条項の消費者契約法9条1号適用(肯定)

東京地裁R3.6.10

<事案>
原告である適格消費者団体が被告に対して差止請求をした事案

<解説>
適格消費者団体は、消費者契約法13条3項に基づき認定された特定非営利活動法人等であり、事業者等が不特定かつ多数の消費者に対し法4条1項から4項に規定する行為を現に行い又は行うおそれがあるときは、その事業者に対し、当該行為の停止若しくは予防又は当該行為に供した物の廃棄若しくは除去等を請求することができる(法12条1項)。

<請求>
被告は、
①消費者との間で受講契約を締結するに際し、退学、除籍処分の際に既に納入している入学時諸費用を返金しないとの意思表示を行ってはならない
前記①の意思表示が記載されて契約書、約款、学則その他一切の表示を破棄せよ
被告従業員に対し、前記①の意思表示を行ってはならないこと及び前記①の意思表示を記載した契約書、約款、学則等を破棄して使用しないことを周知徹底させる措置をとれ
とするもの。

<規定>
消費者契約法 第九条(消費者が支払う損害賠償の額を予定する条項等の無効)
次の各号に掲げる消費者契約の条項は、当該各号に定める部分について、無効とする。
一 当該消費者契約の解除に伴う損害賠償の額を予定し、又は違約金を定める条項であって、これらを合算した額が、当該条項において設定された解除の事由、時期等の区分に応じ、当該消費者契約と同種の消費者契約の解除に伴い当該事業者に生ずべき平均的な損害の額を超えるもの 当該超える部分

<判断>
●入学時諸費用の不返還条項が消費者契約の解除に伴う損害賠償額を予定し、又は違約金を定める条項に当たるか(法9条1号)
本件スクールの学則によれば、
入学時諸費用38万円の支払が入学条件とされており、そのうち、本件スクールの受講生としての地位を取得するための対価(権利金部分、入学時諸費用のうち12万円)は、被告が返還義務を負うものではないが、
入学時諸費用のうち前記権利金部分を除いた費用部分は返還義務があり、契約解除に伴う損害賠償額の予定または違約金の定めの性質を有し法9条1号に該当。

●本件不返還条項に定める入学時諸費用の額に平均的な損害の額を超える部分はあるか
法9条1号は消費者契約の解除に伴い事業者に生ずべき平均的な損害を超える部分の返還義務を定めている。
受講契約の契約解除による損害と被告が主張するもの
①受講生の紹介を受けている会社に対する手数料
②業務委託費用
③入学対応のための人件費
④宣材写真の撮影委託費用
⑤教材費
⑥入学対応の建物の賃料
⑦光熱費
⑧ローン会社に対する保証金

受講契約が解除されることにより被告に生じる平均的な損害は、1人の受講生と被告との間の受講契約が解除されることにより、被告に一般的、客観的に生じると認められる損害
④宣材写真の撮影委託費用2516円、⑤教材費595円以外の被告主張の損害は平均的な損害に該当しない。
被告は、入学時に納入される38万円の内訳を、入学金34万円、施設管理料2万円、教材費1万円、事務手数料1万円としており、受講契約解除に伴う平均的な損害は、被告主張の事情を最大限に斟酌しても1万円を超えることはない。
⇒同額を被告の損害と認定。

入学金権利金部分12万円に、認定した平均損害金1万円を加えて13万円を超える部分については無効⇒法12条3項に基づき同部分を内容とする意思表示についての差止請求を認容。

<解説>
「平均的な損害」とは、
同一事業者が締結する多数の同種契約事案について類型的に考察した場合に算定される平均的な損害という趣旨。

最高裁H18.11.27:
「平均的な損害の額」の立証責任は、返還を求める原告にある。
but
損害の内容、額についての資料(証拠)は、被告の側にある⇒被告がその内容を全て明らかにしない限り、原告の立証は容易ではない。
消費者が返還を求めたとしても、事業者側が資料を出さないことにより、平均的損害の立証が困難となり、敗訴あるいは和解により終結する場合がある。

判例時報2513

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