« 破裂脳動脈瘤に対する血管内治療であるコイル塞栓術⇒術内の本件動脈瘤の再破裂により死亡の医療過誤(肯定) | トップページ | ツイッター上で名誉権を侵害する投稿⇒当該投稿の直前にアカウントにログインした際の発信者情報につき、経由プロバイダに対する開示請求が認められた事例 »

2022年6月30日 (木)

防衛大での上級生らかの暴行、強要等のいじめ行為⇒履行補助者である同校教官らの安全配慮義務違反があるとして、国賠請求が認められた事例

福岡高裁R2.12.9

<事案>
Xは、防衛大学校を退校。
在校中、在校生8名から暴行、強要等の加害行為を受けた⇒精神的苦痛を受けるとともに、防衛大からの退校を余儀なくされた。
XがY(国)に対して、防衛大の組織上の安全配慮義務違反又は履行補助者である教官らの安全配慮義務違反による債務不履行に基づき、損害賠償として2297万2380円及び遅延損害金の支払を求め、
控訴審において、Yに対し、教官らには防衛大内部において学生間に暴力等の加害行為が起こらないよう学生を指導監督すべき注意義務を怠った過失がある
⇒国賠法1条1項に基づき、前記と同額の支払を求める請求を選択的に追加。

<原審>
Yあるいは教官らにおいて、本件各行為の発生につき予見可能性はなかった⇒安全配慮義務違反を認めず、請求を棄却。
本件学生らに対する、不法行為に基づく損害賠償請求訴訟については、1名を除く学生らに対する請求について不法行為の成立が認められ、請求を一部認容する判決が確定。
(防衛大の学生は国家公務員butいずれも公務員個人の不法行為が免責される旨の主張をしていない。)

<主張>
X:
①本件当時、防衛大内では学生間指導の手段として暴力行為やいじめ行為等が蔓延していた⇒Yは、組織として、いじめ事案を早期に察知し、相談室の整備やいじめの実態の調査、原因究明等の再発防止策を講ずる態勢を直ちに構築すべき義務を負っていたが、これを怠った。
② 本件各行為は本件学生らによる一連のいじめ行為⇒教官らは、本件学生らが本件各行為を行うことを当初の段階から予見でき、仮にそうでなくても、本件各行為が発生した各段階において予見することができた⇒その都度、事実確認を行う等して再発防止策を講じる義務を負っていたが、これを怠った。
③本件加害行為によって健康被害が生じているXの心身の回復に配慮し、悪化している勤務環境を改善して、Xがその後さらに不利益を受けることがないようにすべきであったにもかかわらず、これを怠った。

Y:
①防衛大において、安全管理体制及び学生に対する指導監督教育の体制を整え、教官らが学生に対し、常日頃から、暴力やいじめ等は厳禁である旨説くなどして、学生間の指導の意義、限界を指導する教育体制をとってきた
②教官らは、それぞれ突発的に行われた本件各行為の発生を予見することはできなかった、
③本件各行為を認識した後は、直ちに事実確認や本件学生らへの指導、医務室への受診などの必要な措置はとっていた

<判断>
Yは、防衛大の学生に対する安全配慮義務として、
学生が教育訓練を受け、学生舎等において生活を送るに当たり、防衛大の組織、体制、設備などを適切に整備するなどして、学生の生命、身体及び健康に対する危険の発生を防止する義務を負い、そこには学生間指導が適切に行われるための指導の実施や具体的な危険の発生防止のための措置を講ずべき義務も含まれる
学生の指導監督を行う教官らは、Yが学生に対して負う同安全配慮義務について履行補助者の立場にある。
Y又は教官らの安全配慮義務違反の有無については、本件当時の学生間指導の実態やこれに対する防衛大の取組状況を踏まえて判断するのが相当。
教官らが、個々の行為が行われた際に、事実の確認、関係者への事情聴取、学生に対する指導、指導記録の記載、報告書の作成や上司への報告等において適切な対応を怠ったため、後の暴力行為等を防ぐことができなかった
⇒教官らの安全配慮義務違反を認めた。

<解説>
国が特別権力関係にある公務員に対しその生命及び健康等を危険から保護するよう配慮すべき義務を負っている(最高裁)
この安全配慮義務の適用範囲は学校事故にも及ぶ。

判例時報2515

大阪のシンプラル法律事務所(弁護士川村真文)HP
真の再生のために(事業民事再生・個人再生・多重債務整理・自己破産)用HP(大阪のシンプラル法律事務所(弁護士川村真文))

|

« 破裂脳動脈瘤に対する血管内治療であるコイル塞栓術⇒術内の本件動脈瘤の再破裂により死亡の医療過誤(肯定) | トップページ | ツイッター上で名誉権を侵害する投稿⇒当該投稿の直前にアカウントにログインした際の発信者情報につき、経由プロバイダに対する開示請求が認められた事例 »

判例」カテゴリの記事

民事」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



« 破裂脳動脈瘤に対する血管内治療であるコイル塞栓術⇒術内の本件動脈瘤の再破裂により死亡の医療過誤(肯定) | トップページ | ツイッター上で名誉権を侵害する投稿⇒当該投稿の直前にアカウントにログインした際の発信者情報につき、経由プロバイダに対する開示請求が認められた事例 »