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2022年5月 4日 (水)

不在者に対する債権者となる可能性があるにとどまる者は失踪宣告の申立てができるか?

東京高裁R2.11.30

<事案>
Cは、不在者の子。
Cは、令和2根に死亡したが、法定相続人は不在者のみ。
Xは、弁護士で、C死亡の前日に、Cとの間で死後事務委任契約及び家屋管理契約(「本件各契約」)を締結。
Xは、本件各契約を締結したことにより、不在者の失踪宣告に関する申立権を有するとして、失踪宣告の申立てをした。

<判断>
不在者の財産管理については、請求権者として利害関係人のほか検察官が規定されている(民法25条1項)のに対し、失踪宣告については、請求権者は利害関係に限られ検察官は含まれない(民法30条1項)

不在者の財産管理は、不在者本人の財産保護のための制度であって、公益的観点から国家の関与が容認されているのに対し、
失踪宣告は、不在者について死亡したものとみなし、婚姻を解消させ、相続を開始させるという重大な効力を生じさせるものであるところ、
遺族が不在者の帰来を待っているのに国家が死亡の効果を強要することは穏当でない。

民法30条1項に規定する利害関係人については、不在者財産管理人の請求権者より制限的に解すべきであって、失踪宣告をすることについて法律上の利害関係を有する者と解すべき。
②仮に本件各契約が有効であるとしても、Xは、Cに対する債権者であって、不在者がCを相続したことを前提として不在者に対する債権者となる可能性があるにとどまる⇒不在者につき失踪宣告をすることについて法律上の利害関係を有するとはいえない。
③XがCに対する債権者であるとして、Cの相続人である不在者に対して弁済を求める必要があるのであれば、不在者財産管理人の選任を申し立て、不在者財産管理人との間で権利義務の調整を図れば足りる。

Xの抗告を棄却。

<解説>
債権者・債務者など、不在者との債権債務関係の相手方にある者については、不在者財産管理人を選任した上、同人との間で債務の弁済や債権の取りたて等の債権債務関係の清算をすることができる⇒利害関係はないとされている。

尚、損害賠償請求訴訟において、交通事故の加害者が被害者の相続人が生死分明でないとして失踪宣告の申立をした事案において、
相続人が有する損賠賠償請求権は相続人固有のそれであることを前提にして、加害者は単なる一般の金銭債務の債務者であるにとどまらず、法律上の義務の存することが、その義務の発生した時点において不在者が生存したことによってみ肯定されるような法律関係に立っている場合には、交通事故の加害者も失踪宣告の申立てをするについて民法30条の利害関係に当たる

● 本件Xも、不在者と債権債務関係の相手方にある者⇒不在者管理人の選任を求めて、同人との間で債権債務関係の清算をすれば足り、民法30条1項にいう利害関係人には該当しない。

● X:失踪宣告をするためだけに不在者財産管理人選任の申立てをしなければならないとするのは迂回
本決定:「不在者財産管理人は、抗告人との権利義務の調整のために必要がある場合には、不在者につき失踪宣告を請求することもできる」としており、不在者財産管理人であれば当然に失踪宣告の申立てできるとは解していない

不在者財産管理人の職務は、不在者の財産を適切に管理することであって、当然に不在者について失踪宣告の申立てができると解すべきではないし、遺族が不在者の帰来を待っているのに、不在者財産管理人が失踪宣告の申立てをすることは穏当を欠く。

判例時報2510

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