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2022年5月12日 (木)

外国人技能実習の管理団体の不法行為が認められた事案

熊本地裁R3.1.29

<解説>
外国人技能実習制度:
わが国で培われた技能、技術又は知識の開発途上地域等への移転を図り、当該開発途上地域等への移転を図り、当該開発途上地域等の経済発展を担う人づくりに寄与することを目的として平成5年に創設⇒平成21年法律第79号により入管法等が改正され、新たな在留資格として「技能実習」が創設され、外国人技能実習生の法的保護及びその法的地位の安定化を図るための措置が講じられた。
but
入管法違反や労働関係法令の違反が発生。

平成28年11月28日、外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律により、
技能実習計画の認定制、実習実施者の届出制、管理団体(実習実施者と技能実習生との雇用契約のあっせん及び実習実施者に対する技能実習の実施に関する管理を行う法人)の許可制、技能実習生に対する人権侵害行為等についての禁止規定、違反に対する罰則、技能実習生に対する相談対応、情報提供、転籍の連絡調整等が規定され、
これらに関する事務を行うものとして外国人技能実習機構を認可法人として新設。

<事案>
フィリピン共和国国籍のとび職種の技能実習生であるXが、
管理団体であるY1に対し、
Y1が、
①実習実施者であるY2への指導・管理を怠ったこと
②Xを強制的に帰国させようとしたこと
③転籍に向けて他の実習実施者と管理団体等との連絡調整等の措置を怠ったことについて、
不法行為に基づく損害賠償請求として慰謝料等の支払を求め、

Y2に対し、
①とび作業の本件審査基準の要件附則、②労災隠し、③重機の運転をさせたこと、④退職を強要したことについて、不法行為に基づく損害賠償請求として慰謝料等の支払を求め、
⑤被告Y2との雇用契約に基づいて、時間外労働賃金等の支払を求め、⑥賃金からの不当な控除があったとして不当利得の返還を求めた。

<判断>
●Y1に対する請求
◎ とび作業の本件審査基準の要件充実性について:
X:要件を充実するためには必須作業として足場等の組立及び解体作業等を2分の1以上行うことが必要
vs.
本件審査基準の文言を文理解釈した上で、
足場等の組立及び解体作業等を行わなかったとしても、建築物の解体作業等が行われれば要件を充足している。

労災隠し:
Y2に労災申請するよう指導する義務に違反
but
最終的に労災申請をするに至り、身体的な治療を受けるとともに経済的な損失の補填も受けた
労災申請の遅れによって精神的な苦痛を被ったと認めることはできない。

賃金等の不払い等の是正措置義務違反:
経済的な損失はなく、精神的な苦痛を被ったとは認められない

重機の運転:
違法行為であると認めることはできない

◎ 強制帰国:
技能実習法が技能実習生の帰国の意思を書面により確認し、継続の希望を持っている場合には、転籍措置を講じ、帰国が決定した時点で機構に書面で届け出る義務があるにもかかわらず、それを遵守せず、
また、技能実習生の旅券及び在留カードを保管することが禁じられているにもかかわらず、それを出国まで預かって管理しようとした点等に不法行為が成立。
⇒慰謝料50万円及び弁護士費用5万円の限度で認容。

◎ 転籍措置義務違反は認められない。

● Y2に対する請求は、不法行為の成立、不当利得の存在を認めず。

<解説>
管理団体等の技能実習生に対する不法行為の成立を認めた裁判例等
いずれも管理団体等が負う義務を具体的に認定し、場合によっては、人格権の侵害等を理由として不法行為の成立を認めている。

判例時報2510

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