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2022年5月 4日 (水)

市庁舎前広場の使用不許可処分が適法とされた事案

名古屋高裁金沢支部R3.9.8

<解説・判断>
● 最高裁:
学校施設のように特定の目的のために使用すべきものとして設置され、それ以外の目的に使用することを基本的に制限されている施設については、目的外使用の拒否の判断が、原則として、管理者の裁量にゆだねられている(最高裁H18.2.7)と判示する一方で、
地自法244条所定の「公の施設」(住民の福祉を増進する目的をもってその利用に供するための施設)に該当する市民会館や市福祉会館の利用を拒否することが許容されるのは、「他人の生命、身体又は財産が侵害され、公共の安全が損なわれる危険の発生が具体的に予見される場合」や「警察の警備等によってもなお混乱を防止することができないなど特別な事情がある場合」に限られると判示(最高裁H7.3.7等)。

本件:本件広場が地自法244条2項にいう「公の施設」に当たるか否かが争われた。

本判決:
同項の適用を受ける「公の施設」といえるためには、当該施設が住民の福祉を増進することを本来の目的として設置された施設であることを要する。
旧広場完成後に制定された金沢市庁舎前広場管理要綱上も、旧広場は金沢市庁舎の一部として定義付けられ、市の事務または事業の執行に支障のない範囲内で市民の利用を許可することとされていた⇒旧広場が住民の福祉を増進することを本来の目的として設置されたものと認めることはできない。
改修工事後も旧広場の性質が変更されることなく維持されている⇒本件広場は「公の施設」に当たるということはできない。

● 最高裁H18.2.7:
行政財産である学校施設の目的外使用の許否に関する管理者の裁量判断は、許可申請に係る使用の日時、場所、目的及び態様、使用者の範囲、使用の必要性の程度、許可をするに当たっての支障又は許可をした場合の弊害若しくは影響の内容及び程度、代替施設確保の困難性など許可しないことによる申請者側の不都合又は影響の内容及び程度等の諸般の事情を総合考慮してされるもの
その裁量権の行使が逸脱濫用に当たるか否かの司法審査においては、
裁量権の行使に当たっての判断要素の選択や判断過程に合理性を欠くところがないかを検討し、
その判断が、①重要な事実の基礎を欠くか、又は②社会通念に照らし著しく妥当性を欠くものと認められる場合には、裁量権の逸脱又は濫用として違法になる。

尚、違法とした裁判例。
近時、公物の有効利用という観点から、従前はもっぱら公用物として利用されてきたものが公共用物としても利用される現象が多方面で見られるようになっている
⇒公用物は公用物としてしか用いられないという固定観念は払拭されるべきであり、公用物としての本来の用途を妨げることなく、公共用物的利用を行う余地を拡大する上で、公用物について、「空間的時間的分割使用」の観念の導入が重要であるとの指摘。

本件:Xらは、公用物を公共用物的に利用する場面であり、「空間的時間的分割使用」による市庁舎の公用物としての本来の用途を妨げることのない利用に該当⇒「公の施設」に準じた基準により判断されなければならない。
vs.
本判決:本件広場は、あくまで公用財産である金沢市庁舎建物の敷地の一部であり、独立した「公の施設」とは認められず、この性質は、Xらの指摘する「空間的時間的分割使用」という本件広場の利用形態によっても変更されるものではない。
⇒金沢市長による本件不許可処分に裁量権の逸脱、濫用の違法は認められないと判断。

判例時報2510

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