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2022年5月26日 (木)

株式の買取請求をした者の会社法318条4項の「債権者」該当性

最高裁R3.7.5

<事案>
Yにおける株式併合によりその保有する株式が1株に満たない端数になる⇒会社法182条の4第1項に基づき前記株式の買取請求ををしたXが、Yに対し、Xは前記株式の価格の支払請求権を有しているからYの債権者に当たるなどと主張して、会社法318条4項に基づき、株主総会議事録の閲覧及び謄写を求めた事案
XはYから会社法182条の5第5項に基づく支払を受けており、Yは、前記株式の価格が前記支払の額を上回らない限りXは会社法318条4項にいう債権者には当たらないと主張。

<経緯>
(1)平成28年7月4日の臨時株主総会及び普通株式の株主による種類株主総会で、同月26日を効力発生日としてYの普通株式及びA種類株式のそれぞれ125万株を1株に併合する旨の決議
(2)Xは、Yの株式4万4400株を有していたところ、前記各株主総会に先立ち、前記各決議に反対する旨をYに通知し、各株主総会で議案に反対、
(3)同月25日までに、会社法182条の4第1項に基づき、Yに対し、本件株式を公正な価格で買い取ることを請求。
(4)Xは、本件株式の価格についてYとの間で協議が整わなかった⇒会社法182条の5第2項所定の期間内に、東京地裁に、本件株式の価格決定の申立て
(5)Yは、同年10月21日、同条5項に基づき、Xに対し、自らが公正な価格と認める額として1332万円を支払った。

<判断>
会社法182条の4第1項に基づき株主の買取請求をした者は、会社法182条の5第5項に基づく支払を受けた場合であっても、前記株式の価格につき会社との協議が調い又はその決定に係る裁判が確定するまでは、会社法318条4項にいう債権者に当たるというべき
⇒Xが同項にいう債権者に当たると判断した原審の判断は正当。

<解説>
●会社法は、株式会社の株主又は債権者につき、株主名簿、株主総会議事録、取締役会議事録、会計帳簿、計算書類等の閲覧等の請求をすることができる旨を規定。

株主に関しては監視監督権限の実効的な行使のため、
債権者に関しては間接有限責任(会社法104条)の下での債権の回収確保のため
会社の事業、財産及び損益の状況等に関する情報を入手することを可能としてこれらの保護を図ることを目的として設けられたもの。
会計帳簿や取締役会議事録等、開示により営業秘密の漏えい等の弊害が生ずる懸念が大きいものも含まれている

一定数以上の株式を有する株主に限定したり、
請求の理由を明らかにして閲覧等の請求をすべきものとしたり、
拒絶事由を定めたりすることにより会社と開示請求権者の利益ないし損失を衡量する制度設計

「株主」又は「債権者」に該当するか否かの判断自体において、前記弊害が生ずるおそれを考慮して厳格に判断すべき必要性は見出し難い。

●株式併合の場合における反対株主の株式買取請求権の制度
会社は、会社法182条の4第1項に基づき株式の買取請求をした者に対し、前記株式の価格の決定があるまでの間、会社が公正な価格と認める額を支払うことができる(会社法182条の5第5項)

会社が株式買取請求に係る株式の価格につき支払うべきものとされる利息が市中金利に比して高額であることによる濫用的買取請求に対処するために導入。
but
買取請求に係る株式の価格の支払請求権は、前記価格についての当事者間の協議が調い又は前記価格の決定に係る裁判が確定するまではその価格が未形成

前記価格の形成以前の時点でこれを弁済により消滅させることができるかという点自体にき疑問があり得る。
弁済自体は可能であるとしても、その価格が未形成である以上、当該弁済によりその全部が消滅したと認定することは不可能。
・・・

判例時報2511

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