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2022年5月 8日 (日)

石炭火力発電所の運転差し止めを求めた事案

仙台高裁R3.4.27

<事案>
仙台港に建設された石炭火力発電所・仙台パワーステーションの運転差し止めを周辺住民が求めた訴え。
周辺住民であるXら124名は、
①大気中に排出される有害物質により、呼吸系、循環器系、免疫系に悪影響を及ぼし、早期死亡リスクを増大させる等、深刻な健康被害が発生し、本件発電所の運転により生命・身体に重大な侵害が及ぶ危険性が生じる
②温室効果ガスにより促進される地球規模の気候変動によっても生命、健康及び身体が侵害される
③近くにある蒲生干潟の生態系に悪影響を及ぼし、生物多様性が損なわれる

本件発電所を建設・運転するYに対し、身体的人格的又は平穏生活に基づく妨害予防請求権を根拠として運転差止めを求めた。

Xらは、PM2.5の濃度には閾値がなく低濃度でも健康被害が発生し、PM2.5や二酸化窒素の濃度が上昇することにより、仙台市及び近隣地域において脳卒中、肺がん、心疾患、呼吸器疾患等により、年間9.7人の早期死亡者、年間1人の低出生体重児を発生させるとするシミュレーション結果を示した論文を援用。

<一審>
現時点において本件発電所の運転による環境汚染の態様や程度が特別顕著なものとは認められず本件発電所の運転により環境を汚染する行為は、社会的に容認された行為としての相当性を欠くということはできず平穏生活権を侵害するものとして違法となると認めることはできない。
⇒請求棄却。

<判断>
本件発電所から排出される大気汚染物質により受ける健康被害の危険性は、社会生活上受忍すべき限度を超える具体的な健康被害の危険性とはいえない
⇒本件発電所の運転は、身体的人格権又は平穏生活権に対する違法な侵害行為とはいえない
⇒控訴棄却

健康被害の危険性については・・・抽象的な危険は否定しがたい
but
相応の環境対策を講じ、現実に排出される大気汚染物質は周辺の地方公共団体との公害防止協定で定めた排出基準を大幅に下回り、周辺地域におけるPM2.5、二酸化窒素などの測定値が営業運転開始後も環境基準を下回る状態で推移し、本件発電所の運転により大気汚染状態が悪化したことを具体的に裏付ける事情が認められない
PM2.5には健康被害発生の閾値がないことを前提としても、本件発電所の運転により健康被害が発生する具体的な危険性は認められない。

温室効果ガスの排出による地球規模の気候変動や生態系への悪影響という面でも、具体的な危険は認められない
・・・・国民生活のインフラとして相当程度の社会的有用性ないし公共性を有する。

<解説>
環境被害の違法性は、被侵害利益の種類・性質と侵害行為の態様との相関関係から社会生活上の受忍限度を判断する考え方が一般的。

判例時報2510

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