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2022年5月26日 (木)

申立人ら夫婦が申立人母の非嫡出子を養子にすることの許可を求めた事案で、父との関係でニュージーランド法を準拠法とされた事案

東京家裁R3.1.27

<事案>
申立人ら夫婦(ニュージーランド及びD国籍を有する申立人父と日本国籍を有する申立人母)が、申立人母とH国籍を有する実父との間の非嫡出子である未成年者(日本国籍及びH国籍)を申立人らの要しとすることの許可を求めた事案。

<判断>
申立人父との関係ではニュージーランド法を
申立人母との関係では日本法を
それぞれ準拠法として認定した上、
申立人らと未成年者との間でそれぞれ適用される法における養子縁組の要件(保護要件を含む。)について検討し、本件申立てを許可。

<規定>
法適用通則法 第三一条(養子縁組)
養子縁組は、縁組の当時における養親となるべき者の本国法による。この場合において、養子となるべき者の本国法によればその者若しくは第三者の承諾若しくは同意又は公的機関の許可その他の処分があることが養子縁組の成立の要件であるときは、その要件をも備えなければならない。
・・・
法適用通則法 第三四条(親族関係についての法律行為の方式)
第二十五条から前条までに規定する親族関係についての法律行為の方式は、当該法律行為の成立について適用すべき法による。
2前項の規定にかかわらず、行為地法に適合する方式は、有効とする。

法適用通則法 第三八条(本国法)
当事者が二以上の国籍を有する場合には、その国籍を有する国のうちに当事者が常居所を有する国があるときはその国の法を、その国籍を有する国のうちに当事者が常居所を有する国がないときは当事者に最も密接な関係がある国の法を当事者の本国法とする。ただし、その国籍のうちのいずれかが日本の国籍であるときは、日本法を当事者の本国法とする。
・・・

<解説>
●準拠法について
養子縁組における準拠法:
法適用通則法31条1項前段⇒縁組の当時における養親となるべき者の本国法による。
同項後段⇒養子となるべき者の本国法によればその者若しくは第三者の承諾若しくは同意又は公的機関の許可その他の処分があるときは、その要件(「保護要件」)をも備えなければならない。

渉外養子縁組の実質的成立要件は、
縁組当時の養親の本国法により、
保護要件については養子の本国法が併せて考慮される。
本件では、申立人父と未成年者が重国籍⇒同人らの本国法を確定する必要。
重国籍の場合の本国法:法適用通則法38条1項。

申立人父について、
ニュージーランド及びDのいずれも常居所があるとは認められない。
申立人父のD及びニュージーランドにおける居住歴、ニュージーランドへの定期的訪問といった事情⇒ニュージーランドとDのうち申立人父に最も密接な関係がある国はニュージーランド⇒本国法なニュージーランド法。
未成年者の本国法は日本(同条但書)。

●保護要件については、
成立する養子縁組が断絶型の養子縁組⇒特別養子縁組の保護要件
非断絶型の養子縁組⇒普通養子縁組の保護要件
が必要。
ニュージーランド法の養子縁組は、実親と養子との関係について断絶効があるとされている。
but
配偶者の一方の本国法上、断絶型の養子縁組の定めしかない場合であっても、地方配偶者の本国法上、非断絶型の養子縁組が認められるときは、当該夫婦は被断絶型の養子縁組をすることができると解されている。

本件:申立人母が、夫婦共同縁組で普通養子縁組の申立てをしている⇒申立人父との間でも被断絶型の養子縁組が成立すると解され、本件審判も、養父子関係について、普通養子縁組に即した日本法の保護要件を検討。

●ニュージーランド法の養子縁組の要件
①養子の年齢制限、②養親の年齢要件、③夫婦共同縁組、④試験養育、⑤実親等の同意、⑥裁判所の養子縁組命令

要件⑤について:
同意が要求される実親等について、非嫡出子の場合、母又は(母が死亡している場合は)生存している後見人若しくは死亡した母から任命された後見人。
かかる場合において必要であると裁判所が判断するときは、裁判所は父の同意を要件とすることができる旨を規定。

本審判:
実父の同意を要件とする必要性について、
断絶型の養子縁組が成立するニュージーランド法において、実父の同意は裁判所が必要と判断するときに限り、要件とされている。
本件において成立する養子縁組が申立人父との間においても非断絶型にとどまる。
⇒実父の同意は不要としている。
ニュージーランド法は、養子縁組命令を発するのにソーシャルワーカー(児童福祉司)の報告書の提出を要する旨を規定。

本審判:
同規定は手続規定⇒本件に適用を要しない。
but
家庭裁判所調査官の調査報告書によりソーシャルワーカーの報告書を代替することも可能。

試験養育を要件とする規定についても、手続規定⇒適用を要しないとも解されるが、その実質から同居期間の要件を定めていると解することもできるとの指摘。
ニュージーランド法は、養子縁組は裁判所のする養子縁組命令により成立。
本審判:この命令は、日本の家庭裁判所のする養子縁組許可の審判をもって代えることができる。
未成年者は申立人母の非嫡出子⇒申立人母については、縁組許可の審判は不要(民法798条ただし書)であり、届出によって縁組を成立させることとなる。
but
夫婦共同縁組を同時に成立させるため、申立人父については、いわゆる分解理論を用いて、養子縁組許可の審判をする必要。

分解理論:
養子縁組命令の裁判を、養子縁組の実質的成立要件に関わるものとして裁判所等公的機関の関与を必要とする部分と、
養子縁組を創設させる部分とに分解した上で、
実質的成立要件の審査部分については家庭裁判所の許可の審判という形で代行させ、
縁組の形式的成立要件については法適用通則法34条2項によって行為地法である日本法の方式(戸籍法上の届出)によることとするもの。
その場合、理論的には、主文は
「申立人父が申立人母とともに未成年者を養子とすることを許可する。」とすれば足りるとされるが、
本審判:「申立人らが未成年者を養子とすることを許可する。」

申立人母からも申立てがあり、夫婦共同縁組の申立ての形を採っている場合に、申立人母からの申立てを認容することも許容されるという解している。

判例時報2511

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