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2022年5月30日 (月)

担保不動産競売の債務者が免責決定でその相続人が民執法188条、68条の「債務者」に当たるか(否定)

最高裁R3.6.21

<事案>
Aが所有する不動産につきAを債務者とする担保不動産競売の開始決定がされた⇒Aについて破産手続が開始されたAは免責決定を受けた・担保権の被担保債権は免責決定の効力を受けるもの⇒Aは死亡し、その子であるX等がAを相続。
担保不動産競売事件において最高買受申出人とされたXが、原々審において、買受けの申出が禁止される「債務者」(民執法188条、68条)に当たり、売却不許可事由(民執法188条、71条2号)があるとして、売却不許可決定⇒同決定に対して執行抗告。

<判断>
民執法188条において準用する同法68条の立法趣旨⇒前記相続人(当該債務者の相続人)は「債務者」に当たらない⇒原決定を破棄し、原々決定を取り消した上、その他の売却不許可事由の有無につき審理を尽くさせるため、本件を原々審に差し戻した。

<規定>
民執法 第六八条(債務者の買受けの申出の禁止)
債務者は、買受けの申出をすることができない。
第一八八条(不動産執行の規定の準用)
第四十四条の規定は不動産担保権の実行について、前章第二節第一款第二目(第八十一条を除く。)の規定は担保不動産競売について、同款第三目の規定は担保不動産収益執行について準用する。

<解説>
●民執法68条、188条の立法趣旨
旧法制下では、債務者の買受資格を否定するか否かは立法政策の問題
強制競売において債務者の買受資格を否定する通説:

①債務者に差押不動産を買い受けるだけの資力があるのであれば、まず差押債権者に弁済すべき
②債務者が差押不動産を買い受けたとしても、請求債権の全部を弁済できない程度の競売代金の場合には、債権者は同一債務名義をもって更に同一不動産に対して差押え、強制執行をすることができる⇒無益なことを繰り返す結果になり、これを許す場合には競売手続が複雑化する
③自己の債務すら弁済できない債務者の買受申出を許すと、代金不納付が見込まれ、競売手続の進行を阻害するおそれた他の場合より高い
民執法においては、強制競売と担保不動産競売とは可及的に歩調を合わせる⇒強制競売又は担保不動産競売のいずれであるかを問わず債務者の買受資格を否定するものとされ、同法68条、188条が規定。

●「債務者」の意義
担保不動産競売の債務者が免責許可の決定を受け、同競売の基礎となった担保権の被担保債権が前記決定の効力を受ける場合の債務者やその相続人が「債務者」に当たるか?

前記の場合は、当該債務者やその相続人は、被担保債権を弁済する責任を負わず(破産法253条1項本文)債権者がその強制的実現を図ることもできなくなる。

これまで弁済を怠った本人として目的不動産を買い受けることがなお相当でないとする見解があり得るとしても、その相続人については、
①目的不動産の買受けよりも被担保債権の弁済を優先すべきであるとはいえない
②買受けを認めたとしても同一の債権の債権者の申立てにより更に強制競売が行われることもない。
③当該債務者については、代金不納付により競売手続の進行を阻害するおそれが類型的に高いことが否定できないにしても、その相続人については、前記おそれが類型的に高いとはいえない。

前記相続人が形式的にみても債務者に当たることは否定し難いものの、
その買受資格を否定すべき理由もない中でこれを否定する形式的な解釈を採ることは、
政策的な理由から債務者の買受資格を否定したにすぎない民執法188条において準用する同法68条の解釈として妥当でない。

●免責の法的性質
破産法253条1項本文の「責任を免れる」の意味
責任が消滅するのであって、債務は消滅せず、自然債務として残存する。
形式的に「債務者」に該当。

判例時報2512

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