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2022年5月23日 (月)

キャバクラ店の従業員の私的交際違反の違約金が無効とされた事案

大阪地裁R2.10.19

<事案>
キャバクラ店を経営する特例有限会社である原告が、女性従業員である被告に対し、
被告が私的交際をせずこれに違反した場合は原告に対して違約金200万円を支払う旨を、原告・被告間で合意。
but
これに違反して被告が男性従業員と交際
⇒ 雇用契約の債務不履行に基づく違約金100万円(一部請求)の支払を求めるとともに、本件合意及びその後の誓約(前記交際のことを他言しない等)に違反したことが不法行為に当たるとして40万円の損害賠償を請求。

被告:本件合意は労基法16条に違反し(争点①)、かつ公序良俗にも反している(争点②)から無効。

<規定>
労基法 第一六条(賠償予定の禁止)
使用者は、労働契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償額を予定する契約をしてはならない。

<判断・解説>
●争点①
本件合意が、使用者が労働契約の不履行について違約金を定めたり損害賠償額を予定する契約をしたりしてはならないと規定した労基法16条に違反し、無効。

労基法16条は、労働契約の不履行についての違約金等に関する規定
but
本件事案は、キャバクラ店での接客業務それ自体の不履行ではなく、それ以外の私生活に関する合意の不履行とも考えられる。
but
原告が雇用契約を締結する前提として被告を含む全従業員に本件合意を要求⇒原告は被告との雇用契約において、単なる接客でなく、交際相手のいない状態で接客を行うことを労働として求めていた⇒本件合意が労働契約の不履行についての違約金等に関する規定と認定したものと思われる。

なお、キャバクラ店等の風俗営業において、店舗経営者が接客担当者を個人事業者として扱い、雇用契約ではなく請負契約や業務委託契約を締結する形式がとられる場合⇒その実質が「事業又は事務所に使用される者で、賃金を支払われる者」(労基法9条)に当たるかどうかの判断が必要。

●争点②
人が交際するかどうかや誰と交際するかはその人の自由に決せられるべき事柄であって、その人の意思が最大限尊重されなければならない
本件合意は、禁止する交際について交際相手以外に限定する文言を置いておらず真摯な交際までも禁止対象に含んでいることや、その私的交際に対して200万円もの高額な違約金を定めている⇒被用者の自由な意思に対する介入が著しい⇒公序良俗に反し無効。

①本件合意について禁止する交際の対象が広範に及んでいることや②違約金が高額であることを理由に公序良俗に反すると認定しており、事例判断にとどまっている。
尚文献。

<解説>
交際禁止をめぐる紛争:
①芸能プロダクションである原告が、専属契約を手家kつして女性アイドルとして芸能活動をしていた被告に対し、被告が男性ファンとの交際を禁止した専属契約に違反したとして、債務不履行又は不法行為に基づく損害賠償を請求した事案において、交際禁止条項が有効であると認定して、請求を認容した事例。(東京地裁)
②①と同種の事案で、所属アイドルが異性と性的な関係を持ったことを理由に損害賠償を請求することは、自己決定権そのものである異性との合意に基づく交際を妨げられることのない自由を著しく制約するものであるとして、債務不履行及び不法行為の成立を認めず、請求を棄却した事例。(東京地裁)

判例時報2511

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