懲戒処分が違法⇒国賠請求認容の事例
東京地裁R3.1.26
<事案>
Xが、Y弁護士会の懲戒委員会のした懲戒議決に基づき業務停止1月の処分⇒本件懲戒処分は国賠法上違法な処分であったと主張して、国賠法1条1項に基づく損害賠償を請求。
<争点>
①懲戒委員会のした本件懲戒議決が違法であり、
②これに基づいてされた本件懲戒処分が国賠法上違法であるといえるか。
<判断>
●争点①
懲戒委員会が、綱紀委員会の議決におて事案の審査を求めることとされた事実とは異なる事実に基づいてXについて懲戒を相当とする議決をした⇒違法。
弁護士法が、懲戒制度において2段階(綱紀委員会・懲戒委員会)の審査手続を設けているのは、「対象弁護士が当該手続内において防御を尽くすことができるようにし、手続の適正を確保」するため⇒懲戒委員会において審理の対象とすべき事実は、綱紀委員会の議決において事案の審理を求めることを相当と認められた特定の具体的事実と同一の社会的事実のほか、これに基づく懲戒の可否等の判断に必要と認められる事実の範囲に限られる。
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①仮に、懲戒委員会の審査の対象が、綱紀委員会のした綱紀議決において審査を相当とされた範囲に拘束されないとすれば、弁護士会自身が懲戒の自由があると思慮したときであっても綱紀委員会の議決を経なければ懲戒処分ができないことと整合しない
②実質的にも、懲戒委員会において対象弁護士が防御するとすれば、その範囲は綱紀議決における「審査を相当とされた事実」を前提とする⇒懲戒処分の手続的正当性に鑑みても、懲戒委員会における審査の対象は、この範囲に限られると解するしかない。
綱紀議決において綱紀委員会が審査に付した事由:
(Xが受任した事件が法律上正当な依頼であることを前提として)Xが受領した報酬額が不相当であること
懲戒委員会が懲戒相当とした事由:
Xが違法な事件に関与したこと及びXが違法な依頼に対して報酬を受領したこと
~
実質的には本件綱紀議決において懲戒委員会における審査の対象とされていなかった事実。
●争点②
弁護士会による懲戒処分は、弁護士会の懲戒委員会がその職務上通常尽くすべき注意義務を尽くすことなく、漫然と手続上違法な懲戒の議決をしたと認められる場合に、国賠法上も違法となる。
本件懲戒議決はこのような違法がある。
<解説>
本判決は、本件懲戒処分の内容(実体的部分)が違法であったかどうかについては判断していない。
最高裁:
弁護士法が前記2の自治的な懲戒の制度を設けている趣旨に鑑み、ある事実関係が懲戒事由に該当する場合に懲戒するか否か、懲戒するとしてどのような処分を選択するかどうかなどは、原則として当該弁護士会の合理的な裁量に委ねられている
⇒
裁判所が弁護士会の懲戒委員会の実体判断を捉えて違法と判断することは、極めて例外的な場面に限られるのではないか。
判例時報2512
大阪のシンプラル法律事務所(弁護士川村真文)HP
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