« 優生保護法訴訟 | トップページ | 工場で発がん性物質にばく露⇒膀胱がんで、使用者の安全配慮義務違反による債務不履行責任が認められた事例 »

2022年4月13日 (水)

特殊詐欺行為が暴対法31条の2の「威力利用資金獲得行為」に当たるとされた事例

東京高裁R3.1.29

<事案>
Xが、
①本件詐欺行為は暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律(「暴対法」)31条の2の「威力利用資金獲得行為」を行うについてされたものであり、本件詐欺行為の当時、亡P1、Y7及びY8(「P1ら」)はC会の「代表者等」(同条本文)であったと主張するとともに、
②本件詐欺行為はC会の事業の執行について行われたものであり、本件詐欺行為の当時、P1やY9の使用者であり、Y7及びY8はP1に代わって事業の監督をする者であった。

P1の相続人であるY1ないしY6(「P1承継人」)並びにY7及びY8に対し、暴対法31条の2本文又は民法715条1項本文若しくは同条2項に基づき、
Y9に対し民法719条に基づき、
本件詐欺行為によるXの財産的損害1000万円、慰謝料500万円、弁護士費用450万円の合計1950万円(P1承継人らに対しては「前記の各按分の限度での連帯支払)を求めた。

<原審>
本件詐欺行為の当時、Y9はF組の構成員であったと推認され、この推認を覆すに足りる証拠はない
but
Y9がC会又はその構成団体F組の威力を利用したと認めることはできず、Y9がC会の事業として本件詐欺行為を行ったと認めることもできない。
⇒P1らがXに対し暴対法31条の2又は民法715条に基づく損害賠償責任を負うとは認められない。

Xの請求をY9に対し、Xの本件詐欺による財産的損害1000万円及び弁護士費用100万円の合計1100万円並びにこれに対する遅延損害金の支払を求める限度で認容。

<判断>
後記参照
・・・を総合考慮すれば控訴人の被った精神的苦痛は、財産的損害の賠償をもって完全に慰謝されるものとはいえない

慰謝料も100万円肯定

<規定>
暴対法 第三一条の二(威力利用資金獲得行為に係る損害賠償責任)

指定暴力団の代表者等は、当該指定暴力団の指定暴力団員が威力利用資金獲得行為(当該指定暴力団の威力を利用して生計の維持、財産の形成若しくは事業の遂行のための資金を得、又は当該資金を得るために必要な地位を得る行為をいう。以下この条において同じ。)を行うについて他人の生命、身体又は財産を侵害したときは、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。ただし、次に掲げる場合は、この限りでない。

一 当該代表者等が当該代表者等以外の当該指定暴力団の指定暴力団員が行う威力利用資金獲得行為により直接又は間接にその生計の維持、財産の形成若しくは事業の遂行のための資金を得、又は当該資金を得るために必要な地位を得ることがないとき。

二 当該威力利用資金獲得行為が、当該指定暴力団の指定暴力団員以外の者が専ら自己の利益を図る目的で当該指定暴力団員に対し強要したことによって行われたものであり、かつ、当該威力利用資金獲得行為が行われたことにつき当該代表者等に過失がないとき。

<解説>
●暴対法31条の2は、民法715条(使用者責任)の規定を適用して代表者等の損害賠償責任を追及する場合において生ずる被害者側の立証負担の軽減を図る規定。
暴対法31条の2「威力利用資金獲得行為」とは、「当該指定暴力団の威力を利用して生計の維持、財産の形成若しくは事業の遂行のための資金を得、又は当該資金を得るために必要な地位を得る行為をいう。」
指定暴力団の「威力を利用して」とは、当該指定暴力団に所属していることにより資金獲得活動を効果的に行うための影響力又は便益を利用することをいい、
当該指定暴力団の指摘暴力団員としての地位と資金獲得活動とが結びついている一切の場合をいう。

●本判決:
①被害者側の主張立証責任の負担の軽減を図るという暴対法31条の2の立法趣旨
②暴対法9条が指定暴力団員による暴力的要求行為の禁止について相手方に「威力を示して」要求することを要件としているのと異なり、暴対法31条の2が「威力を利用」するとの文言を見用いていること等

同条本文の「当該指定暴力団の威力を利用して」とは、指定暴力団員が、当該指定暴力団に所属していることをにより資金獲得活動を効果的に行うための影響力又は便益を利用することをいい、
当該指摘暴力団の指定暴力団員としての地位と資金獲得活動とが結びついている一切の場合をいう趣旨であって、必ずしも当該暴力団の威力が被害者に対して直接示されることを要しないとの解釈を前提。

指定暴力団の組織・活動、特殊詐欺における暴力団構成員の関与の実態等をふまえながら、
①指定暴力団員において、特殊詐欺の受け子の役割を実行した人物が指定暴力団員に対する恐怖心や経済的な恩義から受け子の役割の実行を継続せざるを得ない状況を作り出した上、当該人物を自らの統制の下に置き、自らの指示により受け子の役割を忠実に実行させていた
特殊詐欺の受け子の役割を実行する際の具体的な手順等を説明するなどして詐欺行為に加担した人物が指定暴力団員に対する恐怖心から同人の指図に従うことを利用して、当該人物を詐欺行為に加担させていたこと等の具体的な事実関係

指定暴力団の構成員を含むグループによって行われた特殊詐欺行為が暴対法31条の2本文の「威力利用資金獲得行為」を行うについてされたものとして、同条に基づく指定暴力団の代表者等の損害賠償責任を肯定

判例時報2508

大阪のシンプラル法律事務所(弁護士川村真文)HP
真の再生のために(事業民事再生・個人再生・多重債務整理・自己破産)用HP(大阪のシンプラル法律事務所(弁護士川村真文))

|

« 優生保護法訴訟 | トップページ | 工場で発がん性物質にばく露⇒膀胱がんで、使用者の安全配慮義務違反による債務不履行責任が認められた事例 »

判例」カテゴリの記事

民事」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



« 優生保護法訴訟 | トップページ | 工場で発がん性物質にばく露⇒膀胱がんで、使用者の安全配慮義務違反による債務不履行責任が認められた事例 »