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2022年4月17日 (日)

1人しかいない監査役による報酬増額決定と善管注意義務違反(否定)

千葉地裁R3.1.28

<事案>
Yの常勤監査役を解任されたXが、Yに対し、未払報酬額を請求するとともに、解任に正当な理由がないとして、会社法339条2項に基づく損害賠償を請求した。

<主張>
X:Yに対し、
①平成28年6月10日に、Xが受けるべき報酬額を株主総会が定めた監査役報酬の最高限度額である月額100万円にする旨の決定(本件増額決定)をしたにもかかわらず、同月分から平成29年5月分までの間の報酬につき、本件増額決定前の報酬額である月額65万円しか支払われない⇒その差額の支払を求めた
②平成29年5月26日のYの定時株主総会において、正当な理由なく監査役を解任された⇒報酬、賞与、退職慰労金及び功労金相当額の損害賠償を求めた。

Y:
①監査役が自己の監査役報酬を1人で決定することはできないし、任期途中に報酬の増額をすることはできない⇒本件増額決定は無効
②Xが本件増額決定をしたことは善管注意義務に反する⇒Xを解任する決議には正当な理由がある
③本件増額決定を行ったXには善管注意義務違反がある⇒Xに対する善管注意義務違反に基づく損害賠償請求権を自働債権、Xの本件請求権を受働債権として対等額で相殺する旨主張。

<判断>
本件増額決定は有効⇒Xの未払報酬請求には理由がある。
Xに善管注意義務違反がある旨のYの主張は理由がない⇒本件解任決議には正当な理由があるとは認められない⇒損害賠償額の一部を認容

<解説>
●監査役が1人の場合の報酬決定
①監査役の独立性の保障の趣旨に反しない
②上限が画されている⇒株主の利益を害することも考えにくい
⇒会社法387条2項に準じた報酬の決定方法として許容されるべき。

●監査役報酬の増額
監査役が期間を定めて自己の報酬額を決定⇒会社と監査役菅の報酬の合意⇒その期間中の増額は、会社の同意を必要とする。
期間経過後は、会社の同意なく報酬増額決定を行うことができる。

●監査役の報酬決定に係る善管注意義務違反

取締役の報酬:
報酬等の最高限度を定め、その枠内で個人別の報酬等の決定を取締役会に一任する株主総会決議の趣旨は、取締役会が個々の取締役ごとにその職責・能力を勘案した上で個人別に相当な報酬等を決定することを委託したものと解される⇒不相当な報酬等を決定した取締役については、善管注意義務違反(会社法330条、民法644条)及び忠実義務(会社法355条)違反を認め得ると解されている。

監査役による報酬決定:
職務の遂行⇒善管注意義務及び忠実義務を尽くしてその決定を行わなくてはならない。
but
監査役の報酬規制を定めた会社法387条の趣旨は、取締役の報酬規制とは異なり、監査役の取締役からの独立性を確保することを目的とするもの
監査役の善管注意義務の有無を判断するに当たっても、この点を前提とした上で株主総会決議の趣旨に反する報酬決定といえるか否かといった観点から判断する必要。

判例時報2506・2507

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