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2022年4月27日 (水)

長時間労働&いやがらせ⇒精神障害⇒死亡の事案

高松高裁R2.12.24

<事案>
Y1社に勤務していたB(死亡当時59歳)が、長時間労働により心理的負荷がかかっている中で、Y1社の営業取締役であるY3(Y1社の代表取締役Y2の娘)によるひどい嫌がらせ、いじめによって、業務上強度の心理的負荷を受け、精神的障がいを発病し自殺
⇒Bの相続人であるA、X1及びX2が、Y1社に対しては安全配慮義務違反に基づき、Y2及びY3に対しては安全配慮義務違反又は会社法429条1項に基づき、損害金等の連帯支払を求めた。

<規定>
会社法 第四二九条(役員等の第三者に対する損害賠償責任)
役員等がその職務を行うについて悪意又は重大な過失があったときは、当該役員等は、これによって第三者に生じた損害を賠償する責任を負う。

<争点>
①Y1社におけるBの業務とBの精神障害・自殺との相当因果関係の有無
②Yらの安全配慮義務違反の有無
③Y2及びY3の会社法429条1項責任の有無
④過失相殺の当否
⑤Xらの損害額

<判断>
争点① :
労災の認定基準である「心理的負荷による精神障害の認定基準について」の定めを踏まえ、
これに依拠すべきでない特段の事情が存するか否かを検討し、
2月の出来事を、指導の範疇を超え、指導の方法として相当とはいいがたく、全体的な言動も相当とは認めがたい⇒一連一体の嫌がらせとみて評価し、
心理的負荷の程度は、前記認定基準における「中」とし、
2月の出来事の約3か月前の時間外労働時間が月100時間を超えていたなど、業務内容も心身に相応の負荷がかかるものであった
⇒2月の出来事の心理的負荷を全体として増加させるものであり、恒常的な長時間労働があったとの要件を満たす
⇒心理的負荷の強度は「強」と評価される。

争点②:
Yらにおいて、Bが心身の健康を損ない、何らかの精神障害を発病する危険な状態が生ずることにつき、予見できた
⇒Y1社は、Bに対し、長時間労働による疲労や業務上の心理的負荷等が過度に蓄積しないように注意ないし配慮する義務(安全配慮義務)を負っていた
but
Bに長時間労働を行わせつつ不相当な指導を行い、前記安全配慮義務に違反した。

争点③:
Y2及びY3は、いずれもBの時間外労働時間及び業務内容並びに2月の出来事の内容を認識し又は認識できたのであり、Y1社の規模を考慮すれば取締役において容易に認識し得た故意又は重過失が認められる⇒いずれも会社法429条1項に基づく損害賠償責任を負う。

争点④:
過失相殺すべき事情はない。

争点⑤:
X1、X2の各損害額につき、相当額を認めた。

<解説>
認定基準:
精神障害の発生は、
環境に由来する心理的負荷(ストレス)と、個体側の脆弱性との関係で定まり、
ストレスが非常に強ければストレスが弱くても精神的障がいは発生し、
脆弱性が大きければストレスが弱くても精神障害は発生するという、
いわゆる「ストレスー脆弱性」理論に依拠。

労災認定の行政内部基準にすぎない
but
専門家の知見を踏まえたものとして、裁判例でも、前記認定基準を参考にすることが多い。
尚、本判決は、部下が上司とともに異動する形態の出張につき、その移動時間についても、労働時間として算入している。
以下、裁判例。

判例時報2509

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