経鼻チューブの先端が胃に届かない状態で食堂内に留置され、栄養剤等注入で死亡の事案
大阪地裁R3.2.17
<事案>
経鼻胃管カテーテル(「本件チューブ」)挿入の9日後に非心原性肺水腫によって死亡⇒相続人らが、医療法人である被告に対して、損害賠償を求めた。
<判断>
①本件チューブが、本件患者の体動が激しく認められる中、スタッフ数名で本件患者の身体を押さえて留置された
②本件チューブは、前記1の救急搬送時に実施された胸腹部CT検査の時点では本件患者の胃に届いておらず、頸部CT検査では咽頭部でトグロを巻いている状態であった
③経鼻チューブを無理に押し込もうとすると食道内で反転し口腔内にたわんだ状態でトグロを巻くことがあり、また、正しくイに挿入された管が挿入から4日程度で口腔内にたわむことは考え難い旨の医学的知見
⇒本件本件チューブは本件患者に留置された当初から胃に届いていなかったことが強く疑われる。
注入開始後の前進症状の悪化
⇒
本件チューブは、留置当初からその先端が胃に届いておらず、本件チューブを導管とした白湯や経鼻栄養等の注入物やイ内容物の逆流によって、重篤な誤嚥性肺炎が生じ、これが原因疾患となって、本件患者が急性呼吸窮迫症候群(ARDS)を発症し、低酸素脳症によって死亡したものと推認できる。
担当医師は、本件チューブが留置された翌日の時点で、本件チューブによる栄養剤等の注入を中止し、速やかに肺炎の初期治療として抗生剤を投与すべき注意義務を負っていた。
前記時点で本件チューブを介した注入が中止されていれば、本件患者の肺炎症状が同月11日の時点ほどまでに重篤化することを回避することができ、その結果、同月16日におけるARDSによる死亡も回避することができたことにつき、高度の蓋然性が認められる。
判例時報2506・2507
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