法例の平成元年改正の施行前における嫡出でない子の母との間の分娩による親子関係の成立の準拠法
最高裁R2.7.7
<事案>
Xが検察官に対し、Xは日本国籍の女性亡Aと韓国の戸籍上の父とされた男性亡Bとの間に出生した子⇒X・A間の親子関係の存在確認等を求めた。
平成元年改正前の法例:
・・・分娩等、認知以外の自由による非嫡出親子関係の成立については準拠法を定めていなかった。
but
令和元年改正で、法例が一部改正され、
新法例18条1項は、認知による場合に限らず非嫡出子関係の成立一般について準拠法を定め、
父との親子関係については子の出生当時の父の本国法を適用し、
母との親子関係については子の出生当時の母の本国法を適用。
(認知による場合以外は、子の本国法は適用されない。(同条2項参照))
but
改正法付則2項本文の経過措置により、平成元年改正法施行前の親子関係の成立については従前の例による⇒解釈論は残る。
平成18年改正で、法適用通則法が制定。
新法例18条1項⇒法適用通則法29条1項に。
法適用通則法施行前の親子関係の成立については新法主義が採用され、法適用通則法の規定が適用。
<判断>
平成元年改正法の施行前における嫡出でない子の母との間の分娩による親子関係の成立については、法適用通則法29条1項を適用し、子の出生の当時における母の本国法によって定める、
<解説>
平成元年改正法施行前の親子関係に適用される準拠法:
〇A:法適用通則法の経過規定を文理解釈⇒新法により法適用通則法の規定が遡及適用されて準拠法が定まる。
B:法適用通則法の経過規定は法適用通則法と新法例との関係を規律するものであり、新法例と旧法例との関係を規律するのは平成元年改正法の経過規定⇒旧法例の規定が適用されて準拠法が定まる
vs.
法律が全部改正された場合には改正前の法律の附則は全部一掃されて消滅することとされており、その附則が採用していた旧法主義を生かすのであれば明示的にその旨の経過措置を講じるのが一般的な法制執務の在り方。
①法適用通則法附則2条の新法主義は、実質的な改正がされない規定に代えて、現代用語化されたにとどまる法適用通則法の規定を適用するという意味合いのもの。
②身分関係に関する事項は継続的な法律関係でない限りその当時の立法によって規律されるべき。
⇒準拠法が代わって異なる身分関係が生ずる場合にまで新たな規律を及ぼすものとは解されない。
⇒
法適用通則法附則2条の趣旨は、法適用通則法施行前に適用されていた規定のうち、法適用通則法によって内容が実質的に変更されていないものについては・・・・法適用通則法の規定の遡及適用を認めることとしたもの。
①分娩による親子関係は認知による場合と異なり母子間の直接的な結びつきがある
②親子関係の存否が確定しなければ子の本国法が定まらないという循環論に陥る場合がある
⇒
法適用通則法施行前に準拠法とされたのは、旧法例22条の法意に鑑み、子の出生当時の母の本国法。
~
法適用通則法29条1項を適用しても変わりがない
⇒
法適用通則法施行後においては、法適用通則法附則2条の趣旨に照らし、法適用通則法29条1項を遡及適用して、準拠法を出生当時の母の本国法とすべきであることを明らかにした。
判例時報2509
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