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2022年4月 7日 (木)

自筆証書遺言で遺言者の押印が否定された事案

東京地裁R2.12.17

<事案>
被相続人の子であるXらが、被相続人の夫であるYに対して、被相続人名義の自筆証書遺言の無効確認を求めた。
Xら:被相続人が自書・押印したものではないと主張。

<判断>
本件遺言書が被相続人の自書によるものであることと押印が被相続人の印章によりなされたことを認めた。
but
①被相続人が死亡する3週間前の時点では本件遺言書には押印がされていなかった
②同時点から被相続人が死亡するまでの3週間の被相続人の言動
③本件遺言書の押印に使用された印章はYが所持
④Yには被相続人の死後に本件遺言書に押印する動機及び現実的可能性があった

被相続人が本件遺言書に押印したとは認められない。

Xらの請求を認めた。

<解説>
●自筆証書遺言には、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、かつ押印しなければならない(968条1項)。
but
判例:
遺言者自身の手によらず押印がされた場合(遺言者の病床の側にいた者が遺言者の依頼を受けてその面前で押印をした事案)や
署名のみがあり押印を欠く場合(遺言書作成の約1年9か月前に日本に帰化したロシア人が、英文で自筆証書を作成した事案)
においても遺言が有効になる余地を認めている。
but
民法が自筆証書遺言の方式として自書のほか押印を要するとした趣旨は、
遺言の全文等の自書とあいまって遺言者の同一性及び真意を確保するとともに、重要な文書については作成者が署名した上その名下に押印することによって文書の作成を完結させるという我が国の慣行ないし法意識に照らして文書の完成を担保することにある。

日本人が日本語で作成した自筆証書遺言に押印が不要とすることは困難。
また、遺言者の意思に基づいて押印がされたことが必要。


文書中の印影が本人の印章によって顕出⇒反証がない限り、当該印影は本人の意思に基づいて成立したものと事実上推定される(判例)。

印鑑は一般に慎重な管理が期待され、理由なく他人の利用に供することは考えられないという経験則を基礎としたもの。

この経験則が妥当しない場合
(ex.①印章の紛失、盗難、盗用、②他人に預託していた印鑑が冒用された、③本人が押印することや押印の意思決定をすること自体が困難又は不自然であることが疑われる場合 )
には、前記推定は覆る。

自筆証書遺言の要件である遺言者の押印があるというためには遺言者の意思に基づいて押印がされたことが必要⇒上記と同様に考えられる。

判例時報2508

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