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2022年4月13日 (水)

工場で発がん性物質にばく露⇒膀胱がんで、使用者の安全配慮義務違反による債務不履行責任が認められた事例

福井地裁R3.5.11

<事案>
発がん性物資ののオルトートルイジン(「本件薬品」)を原料うとして使用し、染料・顔料の中間体を製造する工場を経営するYの従業員Xらが、本家に薬品にばく露し、その結果膀胱がんを発症
⇒Yに対し、雇用契約上の安全配慮義務違反(債務不履行) に基づき、慰謝料及び弁護士費用の損害賠償を請求。

<争点>
Xらは、平成27年から平成28年までにそれぞれ膀胱がんと診断され労災認定を受けており、膀胱がんが本件薬品のばく露によって発症したこと自体は争いがない。

争点は、Yの安全配慮義務違反(予見可能性及び結果回避義務違反)の有無と、
Xらの損害及び因果間j系

<判断>
Yの予見可能性:
①平成13年までにYが入手していた本件薬品の安全データシート(SDS)の記載(本件薬品の経皮的ばく露による健康被害についての記載があり、副工場長がそれに目を通し発がん性も認識いていた)
②Yが従業員に対して平成13年以前から行っていた尿中代謝物の調査結果(本件薬品を含有する有機溶剤が高濃度で検出されていたこと)

Yにおいて、本件薬剤の経皮的ばく露により健康障害が生じ得ることを認識していた。

遅くとも平成13年当時、安全性に疑念を抱かせる程度の抽象的な危惧(予見可能性)を有していた。

Yは、平成13年以降、安全配慮義務の具体的内容として、
従業員が本件薬品に経皮的にばく露しないよう、不浸透性作業服等の着用や身体に本件薬品が付着した場合の措置についての周知を徹底し、従業員に遵守させるべき義務があった。
but
向上のでの実際の作業工程において半袖Tシャツで作業することがあった。
本件薬品が作業服や身体に付着した場合でも直ちに着替えたり、洗い流すという運用が徹底されていなかった。

Yには安全配慮義務違反があった。

膀胱がんの発症、再発のおそれの残存、治療の副作用による苦痛等の個別の事情を考慮し、慰謝料及び弁護士費用として、Xらのうち1名について330万円、他の3名について各275真似んの損害賠償請求を認容。

<解説>
本判決:
安全配慮義務の前提となる予見可能性としては、
生命・健康という被害法益の重大性に鑑み、化学物質による健康被害が発症し得る環境下において従業員を稼働させる使用者の予見可能性としては、安全性に疑念を抱かせる程度の抽象的な危惧であれば足り必ずしも生命・健康に対する障害の性質、程度や発症頻度まで具体的に認識する必要はない

本件薬品の経皮的ばく露により健康被害が生じ得ることを認識し得た⇒遅くとも平成13年当時、安全性に疑念を抱かせる程度の抽象的な危惧(予見可能性)を有していたとして、平成13年の時点での安全配慮義務を認めた。
抽象的な危惧があれば足りるとする裁判例。

SDS:化学物質や化学物質を含む混合物を譲渡・提供する際に、その化学物質の危険性・有害性等に関する情報を譲渡・提供の相手方に提供するための文書であり、平成12年以降、労安法、特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律、毒物及び劇物取扱法において、各指定の物質について提供が義務けられている。

判例時報2506・2507

大阪のシンプラル法律事務所(弁護士川村真文)HP
真の再生のために(事業民事再生・個人再生・多重債務整理・自己破産)用HP(大阪のシンプラル法律事務所(弁護士川村真文))

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