« 1人しかいない監査役による報酬増額決定と善管注意義務違反(否定) | トップページ | 特殊詐欺の受け子から報告を受け、詐欺グループの上位者と思われる人物に報告するなどした被告人につき、正犯意思を否定し、共同正犯の成立を認めず、無罪とした事例 »

2022年4月20日 (水)

特許権の共有者の1人が特許法73条2項の「別段の定」に反して製造販売した事案

知財高裁R2.11.30

<事案>
本件発明等についての本件特許権は、XとYとEとFの4名の共有であり、
これらの4名は、本件特許権について共同出願契約を締結。
その中に
「事前の協議・許可なく、本件の各権利(本件特許権)を新たに取得し、又は生産・販売行為を行った場合、本件の各権利ははく奪される。」との条項(本件条項)
Yは、Xから仕入れ、輸入した本件発明の技術的範囲に属する製品を販売。
but
ある時期から、本件発明の技術的範囲に属する製品(被告各商品)を、日本において製造させて販売。
特許法:特許の共有者は、契約で「別段の定」をした場合を除き、他の共有者の同意を得ないで特許発明を実施することができる(特許法73条2項)。

本件:
XがYに対し、本件条項は、特許法73条2項の「別段の定」に当たる⇒Yが被告各商品を日本において製造させて販売することは、本件特許権の侵害に当たる⇒損害賠償請求及び差止請求
本件条項によってYは本件特許権の共有持分権の持分4分の1の移転登記手続請求などをした。

<判断>
●中間判決:
本件条項は、特許法73条2項の「別段の定」に当たる⇒Yが被告各商品を日本において製造させて販売させることは、本件特許権の侵害に当たる⇒損害賠償請求の原因(数額を除く)がある。
他に判断した裁判例。

●終局判決
◎損害賠償請求について
Xの損害額の主張は、特許法102条2項に基づくもの
⇒同項に基づいて、Yが得た利益額をもとに損害額を認定。

対象期間のYの売上:
取引先からの調査嘱託の結果を中心として、Yの主張する売上額なども考慮して認定。
裁判所がYの取引先に対する調査嘱託を採用して、数多くの取引先に対して調査嘱託がされ、その結果に基づいてYの売上高が認定。

Yの経費:
Yの主張に基づき、個々の項目を個別に検討して、いわゆる限界利益を算定するに当たって、差し引くべき経費に当たるかどうかを判断。
Y:Yの顕著な営業努力を推定の覆滅事由として主張。
vs.
Yの宣伝活動は、広範囲にわたっているものの、スポーツ用品として用いることができる被告各商品の営業活動としては、通常考えられるものであって、特に顕著なものであるとは認められない。

Yの競合品の存在などの主張についても、終局判決は、Yが主張する各商品は競合品とはいえない⇒推定の覆滅を認めなかった。

◎差止請求について
Yが日本において被告各商品を製造、販売したことは、特許法73条2項の「別段の定」に反するものであり、本件特許権を侵害するもの
⇒特許法100条1項に基づくXの被告各商品の製造又は販売の差止請求には理由がある。

Yは、本件条項により、本件特許権をはく奪されることになり、本件発明の実施品の製造のみならず販売もできない⇒差止めの対象は、日本における販売にも及ぶと認めるのが相当。

◎持分移転登録手続請求について
Yが日本において被告各商品を製造させて販売したことは、本件各条項に違反⇒本件条項により、Yの本件特許権の持分ははく奪され、Yは無権利者となり、その者の持分が他の共有者に帰属することになる。

特許の移転、放棄による消滅は、登録しなければその効力を生じないとされているところ(特許法98条1項1号)⇒本件条項は、権利をはく奪された共有者の持ち分を取得することになる他の共有者に対し、違反者に対する持分移転登録手続き請求権を付与するとの内容をも含む。

判例時報2506・2507

大阪のシンプラル法律事務所(弁護士川村真文)HP
真の再生のために(事業民事再生・個人再生・多重債務整理・自己破産)用HP(大阪のシンプラル法律事務所(弁護士川村真文))

|

« 1人しかいない監査役による報酬増額決定と善管注意義務違反(否定) | トップページ | 特殊詐欺の受け子から報告を受け、詐欺グループの上位者と思われる人物に報告するなどした被告人につき、正犯意思を否定し、共同正犯の成立を認めず、無罪とした事例 »

知的財産権」カテゴリの記事

判例」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



« 1人しかいない監査役による報酬増額決定と善管注意義務違反(否定) | トップページ | 特殊詐欺の受け子から報告を受け、詐欺グループの上位者と思われる人物に報告するなどした被告人につき、正犯意思を否定し、共同正犯の成立を認めず、無罪とした事例 »