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2022年3月 3日 (木)

保護処分歴のない少年が2件の万引きを起こした窃盗非行事件⇒第1種少年院送致

東京家裁R3.2.9

<事案>
保護処分歴のない少年が2件の万引きを起こした窃盗非行事件⇒第1種少年院送致

<解説>
●本件の特徴:
(1)非行事実は軽微といえなくもなく、
(2)保護処分歴がなく、
(3)注意欠陥多動症疑い
という資質麺の特性を有する少年に対して第1種少年院送致の判断。

●(1)非行事実の軽重
少年に対する処遇選択、要保護性の程度に即応することが基本となるが、
非行事実の軽重、社会防衛的配慮など総合的な要素を加味した総合的な判断となる。
大半の事件では、非行事実の軽重と要保護性は対応・相関
⇒実務でも、非行事実の軽重に対する評価を出発点に。

非行事実は要保護性(非行性)の顕在化と捉えられる⇒その動機・目的が本人の性格的な問題点を解明する観点から重視され、犯行後の対応なども環境的な問題として考慮。

非行の軽重は、単に行為と結果だけではなく、
非行に至る経緯や動機、常習性、組織性、計画性等の事情も加味して判断される。

本件:
2件の窃盗(万引き)
but
①少年は幼少期より窃盗を繰り返して再三の指導を受けていた上、
②直前の友人の制止も聞かずに窃盗に及んでいる
など非行の背景にある具体的な事情を検討し、
少年の規範意識に対する非難の程度や非行に至る経緯も併せて考慮
⇒「軽微な事案と評価することはできない」と判断。

●保護処分歴の有無
収容保護の不利益性の大きさ⇒収容保護への謙抑的な傾向や段階的処遇の考え方
but
保護処分が時機を失して非行性が深化してしまう場合も少なくない

結局は、事案の内容と要保護性の程度に即して健全な判断を個別的に下していくほかなく、初回係属でも少年院送致を選択することが必要な場合はある。

本決定:
少年に保護処分歴がないことは考慮されている
but
①非行事実に対する評価
②その背後で少年が抱える問題性
③資質面の課題の根深さ
④判断時点までの改善状況と今後の指導の必要性
⑤少年を取り巻く保護環境

少年の要保護性は高く、初回係属であることを踏まえても改善を図るためには収容保護を選択せざるを得ないと判断。

●資質面の特性に対する評価
少年の要保護性を検討するため、家裁調査官による社会調査が活用
少年保護事件の決定書では、
少年の資質面について、
犯罪類型に応じた問題性を意識しながら、社会調査の生物・心理・社会モデルにおいて指摘されているいわゆるB・P・Sの視点のうち、特に、B・Pの視点を踏まえた分析が行われているとされる。
資質面の説示に当たっては、非行事実と資質面の問題性がどのように関連するかを明確にすることが特に重要であるとされる。

本決定:
注意欠陥多動症疑いが指摘。
その資質面の特性が窃盗をはじめとする多数の問題行動につながっており、本件非行と強く関係している上、成育歴に起因した根深いものとなっていることを具体的に検討した上で、最終的な結論に結び付けている。

判例時報2503

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