« 消極的な合意に至ることが期待できなかった口外禁止条項を付した労働審判の違法性 | トップページ | 石綿関連疾患での国賠請求と建材メーカーへの損害賠償請求(民法719条1項後段類推事例) »

2022年2月 3日 (木)

第1種少年院送致の原決定につき、処分が著しく不当として取り消された事例

福岡高裁R3.1.7

<事案>
18歳の少年が、共犯少年と共謀の上、歩道上で男性の背部を飛び蹴りしてその場で転倒させるなどの暴行を加えてその犯行を抑圧し、現金等が入ったバッグを強取し、加療約2週間を要する打撲傷等の傷害を負わせた。

<原決定>
少年を第1種少年院に送致

少年及び原審付添人弁護士が、それぞれ処分の著しい不当を理由に抗告

<判断>
原決定
vs.
少年を直ちに収容保護しなければ、少年を改善更生し、再非行を防止することができなことを説得的に説示していない⇒その判断を是認することはできない。
在宅処遇の可能性を慎重に検討することなく直ちに少年を第1種少年院に送致した原決定の処分は著しく不当

原決定を取り消し、本件を原裁判所に差し戻した。

<解説>
●非行事実としては相当に重い事案。

●非行事実の背後にある少年の問題や再非行の可能性等、要保護性についての評価
原決定:
少年が、
独善的な対人態度からアルバイト先での対人関係に行き詰まり、経済的にも破綻して追い詰められて本件非行に及んだ

その根底には、
少年が家族から突き放されて愛情、依存欲求が満たされず、孤立感や落伍感があった
⇒少年は、自分の身を守るために他人を犠牲にすることもやむを得ないとの考えで、一足飛びに本件非行に至った。
vs.
その資質上の問題がどのように本件非行に結びついているのかは、理解が難しい

原決定:
これらの問題を改善しなければ、少年が再非行に及ぶおそれがある
vs.
①少年が抱える問題⇒対人トラブルを起こし、閉塞感に陥って、再非行につながるという原決定の説示するプロセスは、それ自体迂遠で分かりにくい
②具体的にどういった類型の再非行に及ぶリスクがあるというのか定かでない

本決定:
少年の非行歴、就労等の状況、本件非行後の状況、交友状況
等の事情も考慮し、
非行リスクという観点からみると、少年の資質上の問題が原決定のいうほど根深く深刻なものであるかは疑問であり、むしろ、少年には、自力による問題改善の余地がある。
少年の保護環境がある程度整っていることも考慮
保護処分歴のない少年について、在宅処遇の可能性を慎重に検討せずに直ちに少年院に送致した原決定の処分は著しく不当。

判例時報2501

大阪のシンプラル法律事務所(弁護士川村真文)HP
真の再生のために(事業民事再生・個人再生・多重債務整理・自己破産)用HP(大阪のシンプラル法律事務所(弁護士川村真文))

|

« 消極的な合意に至ることが期待できなかった口外禁止条項を付した労働審判の違法性 | トップページ | 石綿関連疾患での国賠請求と建材メーカーへの損害賠償請求(民法719条1項後段類推事例) »

判例」カテゴリの記事

刑事」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



« 消極的な合意に至ることが期待できなかった口外禁止条項を付した労働審判の違法性 | トップページ | 石綿関連疾患での国賠請求と建材メーカーへの損害賠償請求(民法719条1項後段類推事例) »