プラットフォームを構築・運営している事業者の不当表示の表示主体性(肯定)
東京地裁R1.11.15
<事案>
消費者庁長官が、X(アマゾンジャパン)の運営する商品販売用ウェブサイト(本件ウェブサイト)において、5種類の商品を(「本件5商品」)について、それぞれ、 製造事業者が一般消費者への提示を目的としないで商品管理上便宜的に定めていた価格(参考上代)又は製造事業者が設定した希望小売価格より高い価格を、本件ウェブサイト上の販売価格を上回る「参考価格」として見え消しにした状態で併記し、実際の販売価格が「参考価格」に比して安いかのように表示し(「本件各表示」)、景表法5条2号の有利誤認表示をした
⇒Xに対して景表法7条1項の規定に基づく命令(「本件措置命令」)
⇒XがY(国)に対して、本件措置命令の取り消しを求めた。
<争点>
①Xが本件各表示をした事業者であるといえるか
②本件各表示が実際のものよりも取引の相手方に対して著しく有利であると一般消費者に誤認される表示(景表法5条2号)か
<判断>
●争点①
①不当景品類及び不当表示による顧客の誘因を防止するため、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれのある行為の制限及び禁止について定めることにより、一般消費者の利益を保護するという景表法の目的(景表法1条)を達成するために、景表法5条において禁止されるべき表示を規定
②商品を購入しようとする一般消費者にとっては、通常は、商品に付された表示という外形のみを信頼して情報を入手するしか方法はないことなど
⇒
表示内容の決定に関与した事業者が、景表法52号に該当する不当表示を行った事業者に該当すると解するのが相当。
「表示内容の決定に関与した事業者」には、
他の事業者が決定したあるいは決定する表示内容についてその事業者から説明を受けてこれを了承しその表示を自己の表示とすることを了承した事業者及び
自己が表示内容を決定することができるにかかわらず他の事業者に表示内容の決定を任せた事業者も含まれると解するのが相当。
①Xは、本件ウェブサイト上に、いつ、何を、どこに、どのように表示するのかという仕組みを自由に決定することができる
②Xと出品者が同一の商品を販売している場合、Xが使用するシステムがした総合評価の結果に従って、1つの販売者が設定した販売価格が商品詳細ページの中央部分に表示される仕組みを構築している
⇒
本件においては、Xが、一定の場合に二重価格表示がされるように本件ウェブサイト上の表示の仕組みをあらかじめ構築し、当該仕組みに従って二重価格表示である本件各表示が実際に表示された本件5商品について、Xが、当該二重価格表示を前提とした表示の下で、自らを本件5商品の販売者として表示し、本件5商品を販売していた
⇒Xは、本件各表示について、表示内容の決定に関与した事業者であるといえ、Xが本件各表示をした事業者であると認められる。
●争点②
公正取引委員会「不当な価格表示についての景品表示法の考え方」(平成12年6月30日)消費者庁HP(「本件ガイドライン」)を示し、
本件ガイドラインには、
(1)希望小売価格を比較対象価格とする二重価格表示を行う場合に、製造事業者等により設定され、あらかじめ公表されているとはいえない価格を、希望小売価格と称して比較対象価格として用いるときは、一般消費者に販売価格が安いとの誤認を与え、不当表示に該当するおそれがあるのと定め(本件ガイドライン第4の3(1)ア)
(2)製造業者等が参考小売価格や参考上代等の名称で小売業者に対してのみ呈示している価格を比較対照価格とする二重価格表示を行う場合に、
①これらの価格が、製造業者等が設定したものをカタログやパンフレットに記載するなどして当該商品を取り扱う小売業者に広く呈示されている場合には、当該価格を比較対象価格に用いること自体は可能であるが、希望小売価格以外の名称を用いるなど、一般消費者が誤認しないように表示する必要があるとする定め、
②製造業者等が当該商品を取り扱う小売業者に小売業者向けのカタログ等により広く呈示しているとはいえない価格を、小売業者が参考小売価格等と称して比較対象価格に用いるときには、一般消費者に販売価格が安いとの誤認を与え、不当表示に該当するおそれがあるとする定め(本件ガイドライン第4の3(1)イ)。
これらを判断基準として検討し、
本件5商品について表示された「参考価格」は本件ガイドラインの前記各定めに照らして、いずれも、一般消費者に販売価格が安いとの誤認を与え、不当表示に該当するものと認めるのが相当。
<解説>
いわゆるプラットフォーム型通信販売においてプラットフォームを構築・運営している事業者に不当表示の表示主体性を認めた事例。
判例時報2502
大阪のシンプラル法律事務所(弁護士川村真文)HP
真の再生のために(事業民事再生・個人再生・多重債務整理・自己破産)用HP(大阪のシンプラル法律事務所(弁護士川村真文))
| 固定リンク
« 契約期間が通算5年10か月、更新回数7回の労働者の雇止めと労契法19条1号、2号該当性(否定事例) | トップページ | ピンク歯が頸部圧迫による窒息死を示す所見との法医学者の証言の証拠能力・証明力 »
「判例」カテゴリの記事
- 親族間の土地使用貸借において、当事者の信頼関係破壊を理由に解約が認められた事例(2022.08.15)
- 財産分与に関する処分の審判の申立てを却下する審判に対し、相手方が即時抗告できるか(肯定)(2022.08.14)
- 令和3年10月の衆議院小選挙区選出議員選挙についての1票の格差訴訟(2022.08.14)
- 第一種少年院送致の事案(2022.08.13)
- レストランでの長時間労働⇒劇症型心筋炎を発症して死亡した事例での因果関係(肯定)(2022.08.13)
「経済」カテゴリの記事
- 排除措置命令に係る命令書の主文の記載と理由の記載に違法があるとされた事例(2022.05.14)
- プラットフォームを構築・運営している事業者の不当表示の表示主体性(肯定)(2022.02.15)
- 風営法の規制実現のための独禁法違反(共同の取引拒絶)が争われた事例(2022.01.03)
- 農業協同組合の行為が不公正な取引方法に該当するとされた事案(2020.04.21)
- テレビ用ブラウン管の海外子会社への販売価格に係る日本国外での合意について、独禁法の適用の可否(2019.01.11)
コメント