利益剰余金と資本剰余金の双方を原資として行われた剰余金の配当の税法上の処理
最高裁R3.3.11
<事案>
内国法人である被上告人(X)は、平成24年4月1日から同25年3月31日までの連結事業年度(「本件連結事業年度」)において、被上告人が本件連結事業年度を通じてその出資の持分の全部を保有している米国デラウェア州リミテッド・ライアビリティ・カンパニー法に基づき組成された外国子会社であるA社から、資本剰余金を原資とする剰余金の配当(「本件資本配当」)及び利益剰余金を原資とする剰余金の配当(「本件利益配当」、併せて「本件配当」)を受け、
本件資本配当は法人税法(平成27年改正前)24条1項3号の「資本の払戻し(剰余金の配当(資本剰余金の額の減少に伴うものに限る。)のうち、分割型分割によるもの以外のもの)」(「資本の払戻し」)に、
本件利益配当は同法23条1項1号の「剰余金の配当(株式又は出資に係るものに限るものとし、資本剰余金の額の減少に伴うもの及び分割型分割によるものを除く。)」
にそれぞれ該当するとして、本件連結事業年度の法人税の連結確定申告をした。
所轄税務署長は、本件配当は効力発生日が同一日であることなどから、利益剰余金及び資本剰余金の双方を原資とする剰余金の配当(「混合配当」)であり、その全額が法人税法24条1項3号に規定する資本の払戻しに該当⇒更正処分。
本件:
被上告人が、本件更正処分のうち連結所得金額が本件申告を超え、翌期へ繰越す連結欠損金額が本件申告に係る金額を下回る部分の取消しを求めた。
<争点>
争点①:
本件更正処分のとおり本件配当全体について法人税法24条1項3号が適用されるのか、それとも本件利益配当について同法23条1項1号が適用されるのかという法令解釈の問題(争点①ー1)
仮にこれが肯定されるとしても、本件の事実関係等の下で、本件配当全体が資本の払戻しに該当することとなるのか、又は本件資本配当は資本の払戻に、本件利益配当は同法23条1項1号の剰余金の配当に、ぞれぞれ該当するのかとう問題(争点①ー2)
争点②:
本件配当全体が法人税法24条1項3号の資本の払戻しに該当するとしても、同法の委任を受けて定められた法人税法施行令23条1項3号の規定に従って本件配当のみなし配当金額を計算すると、
A社の簿価純資産価額が直前資本金額を下回っていたこと等から、本件配当のうち利益剰余金を原資とする部分の一部がみなし配当金額ではなく有価証券の譲渡に係る対価の額に算入されることとなる。
本件更正処分もその計算結果に基づいているが、このような計算結果となる同号の規定が法人税法の委任の範囲を超えず、適法なものといえるか。
<原審>
争点①ー1について、
法人税法24条1項3号の資本の払戻しとは、その文理からすれば、「資本剰余金の額の減少によって行う剰余金の配当」、すなわち、「資本剰余金を原資とする配当」をいうものと解すべき。
⇒
資本剰余金及び利益剰余金の双方を原資として配当が行われた場合、
資本剰余金を原資とする配当には同号が
利益剰余金を原資とする配当には同法23条1項1号が
それぞれ適用。
いずれの配当が先に行われたとみるかによって課税関係に差異が生ずるようなときには、例外的に、配当全体が資本の払戻しと整理され、同法24条1項3号の規律に服すると解される。
but
本件は前記の差異が生じる場合ではない。
⇒
本件資本配当には同号が、
本件利益配当には同法23条1項1号が
それぞれ適用される。
国の上告受理の申立てを受理。
<判断>
利益剰余金と資本剰余金の双方を原資として行われた剰余金の配当は、その全体が法人税法24条1項3号に規定する資本の払戻しに該当する。
法人税法24条1項に規定する株式又は出資に対応する部分の金額の計算方式について定める法人税法施行令23条1項3号の規定のうち、資本の払戻しがされた場合の当該払戻し直前の払戻等対応資本金額等の計算方法を定める部分は、
利益剰余金及び資本剰余金の双方を原資として行われた剰余金の配当につき、当該払戻しにより減少した資本剰余金の額を超える当該払戻し直前の払戻等対応資本金額等が算出される結果となる限度において、法人税法の委任の範囲を逸脱した違法なものとして無効。
判例時報2501
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