保護観察処分が正当とされた事例
東京高裁R2.11.20
<事案>
少年、路上において、被害者に対し、メリケンサックを装着した右手拳でその左側頭部を殴打し、被害者に全治10日間を要する左側頭部挫創の傷害を負わせた。
<原決定>
少年の非行の態様及び性格等⇒相当期間保護観察に付することが少年の健全な育成を期するために必要。
<判断>
①・・・報復感情を暴力によって満足させようとした少年の行動は社会的に許容し難く、
②・・・少年の性向にも、思い込みが強く、対人関係を上下関係で考えるなどの問題性が認められ、
③・・・本件非行の態様は危険で、けがの程度も軽微とはいえず、
④・・・少年は、審判期日において、事実を認めながら被害者に悪いとは一切思っていないとも述べており
このような本件非行の原因や少年の抱える問題性
⇒
客観的な視点が持てるように専門家から指導を受ける必要がある
⇒少年を保護観察に付することが必要かつ相当である
という原決定の判断は正当。
<解説>
家裁が少年を保護処分(少年法24条1項)に付するための要件:
①審判条件が具備されていること
②非行事実
③要保護性
が必要。
本件は、③の問題
要保護性:
①犯罪的危険性
②矯正可能性
③保護相当性
の3つの要素からなる。
本決定:
動機、経緯等を含めた非行事実の内容及び少年の性格等の事実関係を把握した上で、非行の態様等の非行の内容に加え、
非行の原因となった少年の性向や問題性等を考慮して、
原決定が処遇選択における合理的裁量を逸脱していないかを審査し、非行の態様及び少年の性格等を考慮して少年を保護観察に付した原決定を是認。
判例時報2494
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