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2022年1月 3日 (月)

風営法の規制実現のための独禁法違反(共同の取引拒絶)が争われた事例

東京地裁R3.3.30

<事案>
パチンコホールの経営者であるXらは、パチンコ遊技機及びパチスロ遊技機の販売業者の事業団体であるYらが、組合員であるZ(販売業者)に対し、風営法施行規則の遊技機の出玉基準の改正により営業所に設置できないことになった遊技機を改正規則の付則で認められた経過措置期間経過前に撤去するというYらを含む業界関係団体の計画に従わないXらに対してパチンコホール営業者が中古遊戯機の設置に係る許認可の際に必要となる保証書作成等の業務の依頼を拒否するよう要請した行為が、独禁法8条5号が定める不公正な取引方法(独禁法2条9項1号イ所定の共同の取引拒絶)の勧奨行為に当たる⇒独禁法24条に基づき、当該行為の差し止めを求めた

<判断>
(1)経過措置期間中の旧規則機の撤去に関してされた行為であっても、経過措置期間中は、旧規則機の設置は風営法上違法と評価されるものではない⇒独禁法の適用は否定されない。
(2)ZがXに対して保証書作成及び打刻申請の対応をあらかじめ拒絶するという本件措置は、独禁法2条9項1号の「供給を拒絶」する行為に該当
(3)本件措置は、Zと他の遊技機販売業者との間で意思の連絡があるといえる⇒独禁法2条9項1号にいう「競争者と共同して」行っているものに当たる
(4)共同の取引拒絶においても、
①当該取引拒絶行為の目的の正当性及び
②当該取引拒絶行為の手段としての相当性
を総合的に考慮して「正当な理由」があるときは、「不公正な取引方法」に該当しない

①について:

法令上の設置期限より早く撤去させる本件撤去計画の推進は、合理的であり、本件措置が達成しようとする事項の公益性、重要性に照らせば、本件措置の目的には正当性がある。

②について:
本件措置は目的を達成するために必要かつ合理的な範囲にとどまるものであれば、手段としての相当性が認められると解されるところ、

・・・・
手段としての相当性も認められる。


不公正な取引法方法に当たらない。
(5)著しい損害(独禁法24条)及び
(6)保全の必要性も否定。

<解説>
● 風営法が客の射幸心を著しくそそるとして営業所に設置が許されなくなった旧規則機につき、Yらを含む業界関係団体が、経過措置期間経過前にこれを計画的に撤去するという計画(本件撤去計画)を立て、かつ、それに従わないパチンコホール営業所に設置するために風営法に基づく営業許可又は変更承認の申請をするのに必要となる保証書の作成等をしないように、傘下の組合員であるZに勧奨したことが独禁法上問題とされた。

●独禁法の適用の有無
独禁法と風営法(=自由な競争を否定)は、同じレベルにある法律で、両法が実質的に矛盾する結果をもたらすことのないように、両法を全体として合理的・整合的に解釈する必要

本決定:
経過措置期間中は、旧規則機の設置は風営法上違法と評価されるものではない⇒独禁法の適用は否定されない。

本件措置が風営法の法益実現を図るものであるという点を独禁法の適用の場面でどう位置付けるか?
独禁法2条9項1号イ所定の取引拒絶行為に該当する場合でも、正当な理由があるときは、「不公正な取引方法」に該当しないとして、
目的の正当性、手段の相当性(=目的を達成するために必要かつ合理的な範囲にとどまる)を審査。
経過措置期間経過後は設置が許されなくなる⇒経過措置期間経過後大量に廃棄を迫られるという風営法上の問題を考慮し、目的の正当性、手段の相当性を肯定。

●エアソフトガンについて安全性を目的に自主基準を設定し、自主基準を遵守しないアウトサイダーを共同の取引拒絶により排除したことが問題とされた事案で、自主基準の目的の正当性、内容の合理性は認めたが、実施方法の相当性を否定した裁判例。

道路運送法上刑罰をもって禁止されている低い料金になっていた状況において、事業者団体が適法な認可料金に近づけるために行われた運賃引き上げカルテルについて違法阻却が認められた公取委員会の審決例。

判例時報2494

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