再審請求弁護人が精神科医とともに死刑確定者と面会する場合の規律
広島地裁R2.12.8
<事案>
死刑確定者として広島拘置所に収容されているX1の再審請求手続の弁護人として選任されていたX2及びX3は、X1の刑事責任能力の判断についての助力を得るため、精神科医であるAをX1との面会に同行する予定
その面会をするに際して、広島拘置所長に対し、職員の立会いのない面会を認めるとともに、3時間の面会を認めること、ICレコーダーを使用した面会内容の録音を認めることを求めた。
but
①職員の立会いのない面会を許さず
②面会時間を1時間に制限
③ICレコーダーの使用を許さず
⇒Xらは、①~③の各措置が違法であると主張して、Y(国)に対して国賠請求。
<判断>
●上記①について
死刑確定者は、再審請求前の打合わせの段階であっても、刑事収用法121条ただし書にいう「正当な利益」として、再審請求弁護人と秘密面会をする利益を有しており、秘密面会の利益は、再審請求弁護人からいえばその固有の利益(最高裁H25.12.10)。
⇒
刑事施設の長は、死刑確定者と再審請求弁護人との面会に、再審請求弁護人ではない者が同席する場合であっても、死刑確定者及び再審請求弁護人に前記の秘密面会の利益が認められるか否かを慎重に検討する必要。
本件面会では、
Xらには、面会の際の発言の内容を職員に知られないことに正当な利益があり、
本件面会の際に不適切な行為や発現がされることが想定され、これを制止する必要性があったとか、X1の心情などを把握する必要性があったなどということはできない。
⇒
職員の立会いのない面会を許さなかった広島拘置所長の措置は、裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用してXらの秘密面会の利益を侵害⇒国賠法1条1項の適用上違法。
●上記②について
本件面会についてXらには秘密面会の利益があった⇒広島拘置所長は、申出に係る3時間の面会について、その時間を制限することにより、Xらが十分な打合せをすることができなくならないかどうかを慎重に検討する必要。
but
同拘置所長は、本件面会に再審請求弁護人ではないAが同席するという理由のみから、漫然と、面会時間を1時間に制限。
~
同拘置所長の措置は、裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用してXらの面会の利益を侵害。
●上記③について
ICレコーダーを用いて面会の内容を録音をした場合には、再審請求弁護人が意図しない音声(死刑確定者の第三者に対する秘密の合図等)まで録音されてしまう危険性や、その音源(電磁的記録)が再審請求弁護人の意図しない形で外部に流出し、その回収が不可能となってしまう危険性が否定できない。
広島拘置所長は、ICレコーダーの危険性を踏まえ、その使用を許さなかった
ものであり、このような同拘置所長の措置が不必要・不合理な庁舎管理権の行使であったなどということはでkkない。
⇒
同拘置所長の措置は、その裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用したものと認めることはできず、国賠法1条1項の適用上違法ではない。
<解説>
平成25年最判:死刑確定者と再審の打合せを目的とする面会につき、秘密面会の申出がされた場合
大阪高裁H29.12.1:
死刑確定者と再審請求弁護人との間の再審の打合せを目的とする面会について、面会時間を制限した刑事施設の長の措置を違法と判断。
また、パソコンの使用を許さなかった刑事施設の長の措置が違法と判断。
本件:
死刑確定者と再審請求弁護人との間の再審の打合せを目的とする面会に第三者が立ち会った場合の秘密面会の利益の有無等を判断した初めての裁判例。
判例時報2497
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