児童福祉法28条1項に基づく、障害児入所施設への入所又は里親委託の承認申立(認容)
名古屋家裁R1.5.15
<事案>
愛護手帳3度相当の軽度知的障がいの認定を受けている未成年者について、児童相談所長が、児福法28条1項に基づいて、未成年者を障害児入所施設に入所させること又は里親に委託することの承認を求めた事案
<判断>
以下の判示で承認
(1)未成年者は愛護手帳3度相当の軽度知的障がいの認定を受けているが、親権者父は、かねてから未成年者の通学する中学校とトラブルを起こしては、未成年者の登校を禁止するなどして、授業日数全体の約6割もの日数を欠席させ、親権者母も親権者父の意向に逆らえなかった
⇒未成年者にとって極めて重要な学習権(成長発達権)を中核とする教育を受ける権利(憲法26条1項)を積極的に妨げていた。
(2)未成年者は、中学校卒業後、特別支援学校高等部に通学。
親権者父は・・・学校との間でトラブルを生じさせ、これをこじらせた挙げ句、未成年者に対し、学校と話をつけるまで帰ってくるな、などと怒鳴りつけ、自らが引き起こしたトラブルの解決を未成年者に押し付けるかのような言動をして、未成年者を家から追い出した⇒その行為自体がネグレクトそのものであり、未成年者の意思に反することを強要して未成年者に過度の精神的ストレスを与えた。
(3)未成年者は、家から追い出されてバス停で途方に暮れて座り込んでいたところを発見されて警察官に保護され、警察署長からネグレクト児童として通告を受けた児童相談所による一時保護が開始。
その後の平成29年7月7日(一時保護開始の1週間後)から現在に至るまで、障害児入所施設において生活しており、日常生活に必要なことは自分ですることができ、学校生活にもて適応して、毎日付き添いなしで登校することができ、意欲的に物事に取り組んでいる。
(4)親権者父母は、未成年者の引き取りを長らく拒んだ末、1年半近くもの間未成年者と面会せず、学校のみならず児童相談所の職員の日をも言い募ってこれらを一方的に攻め立て他罰的な対応に対応に終始し、児相との交信まで拒むようになり、未成年者の将来を見据えた教育にとって必要不可欠な協力連携関係の構築とは真逆の態度を取り続けている。
(5)親権者父母は、にわかに未成年者の引き取りを希望しているが、相変わらず児相職員を非難することに終始しており、未成年者とのこれまでの溝をどのようにして埋め、学校や関係機関とどのように連携して未成年者の将来的な自立を図っていくのかの具体的な考えを示していない。
(6)未成年者は、現在17歳となっており、現在の施設での生活が安定して楽しく登校することができ、自分の時間が持てること等から、家に帰りたくないとの意向を示すようになり、施設入所か里親の下での生活により、高等部への通学を続けていきたいと希望。
(7)現時点において未成年者を現状のまま親権者父母の下に帰らせて未成年者の監護養育を委ねることは、未成年者の意向に反し、安定した日常生活の下で学校教育を受ける機会を再び奪うことに直結するものであって、未成年者の福祉を著しく害するこになる。
⇒
児相所長である申立人が未成年者を障害児入所施設に入所させる措置を取ること又は里親に委託する措置を取ることは、未成年者のために必要かつ相当。
<解説>
最近の審判例:
大阪高裁H29.12.15:
事件本人が負った急性硬膜下血腫等の傷害について、事件本に親権者父及び同母による揺さぶり行為等が強く疑われ、父母は揺さぶり行為等の外力を否認し、あるいは存在自体を軽視し、自らの監護養育環境における問題点に真摯に向き合い危険の再発防止のための具体的な方策を講じることができていない。⇒父母に事件本人を監護させることは著しく事件本人の福祉を害する⇒抗告人の申立てを却下した原審判を取り消し、抗告人が事件本人を乳児院又は児童養護施設に入所させることを承認。
水戸家裁H30.5.28:
利害関係参加人である実父及び義母による虐待は認められないものの、
①実父の事件本人に対する強圧的な接し方により、自閉症スペクトラムの傾向がある事件本人が実父に著しい恐怖を抱き心的外傷を負っている
②利害関係参加人らがこの点を理解しないまま事件本人に接する可能性が極めて高い
⇒
利害関係参加人らがこの点を理解しないまま事件本人を監護させることは著しく事件本人の福祉を害する⇒児童心理治療施設に入所させることを承認。
判例時報2497
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