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2021年12月15日 (水)

形式的には別法人であっても、当該法人と実質的に同一体というべき法人の役職員の行為についての課徴金納付命令

東京高裁R2.7.10

<事案>
外国法人であるXが、本邦の株式市場で相場操縦違反行為をしたとして、金商法により金融庁長官から課徴金納付命令を受けた⇒その取消を求めた。

<対象行為>
Xが、その属する法人グループの別法人であるAに資産運用を委ねていたところ、Aが雇用する複数のトレーダーが、Xの資産運用にあたって意思を連絡して行ったとされた一連の行為。
トレーダーらはXの計算で株式取引。
XとAとは姉妹会社(同一の信託が両者の全株式を保有)の関係にあるが別法人。
トレーダーとXとの間には直接の雇用関係や指揮監督関係はなし。
Xの代表者は、Aの唯一の取締役であり、両会社の全株式を保有する信託の唯一の受益者でもあった。

<争点>
①Xが金商法174条の2第1項の違反者となりえるか。
②処分緒対象となった行為が複数のトレーダーらにより、金商法159条2項1号にいう「一連の」ものとして行われたものか
③処分の対象となった行為が同号にいう「相場を変動させるべき」行為であるか
④処分の対象となった行為が同項柱書にいう「取りh気を誘引する目的をもって」行われたか

<原審>
争点①について:
法人が金商法174条の2第2項の違反者となるためには、当該法人の役員、従業員もしくは当該法人による指揮監督、雇用管理等によりこれらと同視し得る者又は当該法人から具体的な指示を受けた者が、当該法人の計算で相場操縦違反行為を行ったことを要する。
Xがトレーダーらを指揮監督したり、トレーダーらをXの従業員と同視することはできない
⇒Xは同項の違反者とはならない⇒Xの請求を認容。

<判断>
●争点①
ある法人と形式的には別法人であっても、当該法人と実質的に同一体というべき法人の役職員が、当該法人のために金商法159条2項が禁止する行為をした場合には、当該法人が金商法174条の2第1項の違反者となる
①AはXが属する法人グループの資産運用としての有価証券取引のみを行っており、その雇用するトレーダーらの監督もXの完全子会社が行っているという実態を認定、
②Aの運営はそれ自体独立して行われているのではなく、法人グループ全体で一括して行われている
⇒XとAとは実質的に同一体である
⇒トレーダーの行為について、Xが同項の違反者となる。

●争点②~④も、Yの主張を認め、処分に違法はない。

<解説>
金商法174条の2第1項は、金商法159条2項1号に違反する相場操縦違反行為をした者(違反者)に対し、課徴金を課すことを定める。
法人であっても「違反者」となりえる。
問題:実際に行為を行った自然人と当該法人との関係がどのような場合に、当該法人を「違反者」と認めるべきか?

原審と本件で考えが分かれた事案。
本件:Aは、その属する法人グループ外の者の資産運用は行っておらず、いわば閉じた法人グループ内の関係⇒XとAとが実質的に同一体であるとの認定が容易であった。
but
資産運用を行う法人が、その属する法人グループ外の者の資産運用も行っているような場合には、資産運用を委ねた法人と実質的に同一体であるとはいえないこともあり得る。

判例時報2497

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