違法収集証拠排除で大麻等の証拠能力否定⇒無罪の事案
東京地裁R2.3.18
<事案>
①大麻、コカイン及びLSD所持と
②コカイン施用の訴因について
①に係る各薬物とその鑑定書
②に係る尿の鑑定書が、
いずれも違法収集証拠であるとして証拠能力否定⇒無罪の事案。
<判断>
(1)所持品検査に抵抗する被告人を2人がかりで壁に押し付けたり、地面に投げ倒したりしたことは、行動の自由を著しく奪う強度の有形力の行使であり違法。
(2)その後約1時間40分間(職務質問開始から約2時間)、被告人を取り囲み、壁から背を離すことを許さず、ズボンをつかみ続けた留め置き行為は、過度に行動の自由を制限するもので違法。
(3)警察官らは不法残留と大麻所持の嫌疑を持ち、両方の捜査を並行して進めていたが、
① ズボン等に不法残留の証拠物を隠匿しているとは考えにくい
②直ちに逮捕しなければならない緊急性は認められない
⇒不法残留の捜査のために現行犯人逮捕し、着衣等の捜索をしなければならない必要性は小さかった。
大麻所持については、ズボン内に大麻を隠匿している嫌疑は高まっており、その捜査のために着衣等を創作する必要性は高かった。
⇒
当該捜索は、専ら大麻所持の証拠の発見、収集を意図していたと認められ、当該捜索により大麻を発見し、後に差し押さえたことは違法。
大麻を捜索するに当たり、裁判官の審査を経ることよりも迅速に捜査を行うことを優先し、捜索差押許可状の請求を撤回して、不法残留による現行犯人逮捕に伴う捜索をすることとした経緯は、警察官らが令状を取得することを軽視したと解されてもやむを得ず、警察官らの一連の違法性は、令状主義の精神を没却するような重大なもの⇒違法収集証拠として証拠能力を否定。
<解説>
本件:別件捜索差押えの違法性を認定。
別件差押えについては、最高裁が、令状に基づく差押えにつき、
「捜査機関が専ら別罪の証拠に利用する目的で差押許可状に明示された物を差し押さえることも禁止される」と判示。
A:別件捜索差押の問題性を指摘する考え(but重大な違法性を認めたものはなかった)
B:無令状捜索の過程で発見された物件が法禁物であるときは、所持罪の現行犯逮捕ができることから、その現行犯逮捕に伴う無令状捜索差押えが可能となる・・・捜査機関の事前の意図のみを理由にこれを違法とすることはできない(酒巻)
判例時報2492
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