特殊詐欺について送付先のマンションに設置された宅配ボックスから荷物を取り出して受領した者についての詐欺罪の故意・共謀を認めた事案
最高裁R1.9.27
<事案>
現金送付型の特殊詐欺において、氏名不詳者らと共謀の上、Aから2回にわたって現金合計350万円をだまし取り(詐欺既遂事件)、その後、Cから現金をだまし取ろうとしたが、その目的を遂げなかった(詐欺未遂事件)た。
<1審>
各事件について有罪。
<原審>
第1審判決が詐欺未遂事件について詐欺の故意及び共謀を認定した点に事実誤認はない
but
詐欺既遂事件につちえ詐欺の故意及び共謀を認定した点に事実誤認がある
⇒詐欺既遂事件について無罪。
<判断>
詐欺既遂事件について被告人に詐欺の故意が認められないとした原判決は重大な事実誤認をしたというべき⇒原判決を破棄し、被告人の控訴を棄却。
①被告人は、依頼を受け、他人の郵便受けの投入口から不在連絡票を取り出すという著しく不自然な方法を用いて、宅配ボックスから荷物を取り出したうえ、これを回収役に引き渡しており、
②本件マンションの居住者が、第三者である被告人に対し、宅配ボックスから荷物を受け取ることを依頼し、しかも、オートロックの解錠方法や郵便受けの開け方等を教えることなどすることもなく、①のような方法で荷物を受け取らせることは考え難い
⇒
③被告人は、依頼者が本件マンションの居住者ではないにもかかわらず、居住者を名宛人として送付された荷物を受け取ろうとしていることを認識していたと合理的に推認できる。
⇒
④被告人は、送り主は本件マンションに居住する名宛人が荷物を受け取るなどと誤信して荷物を送付したものであって、自己が受け取る荷物を送付したものである可能性を認識していたことも推認できる、。
「名宛人から荷物の受取を依頼された」旨の被告人の供述は信用できず、それ以外に前記の詐欺の可能性の認識を排除するような事情も見当たらない。
⇒
被告人は、自己の行為が詐欺に関与するものかもしれないと認識しながら本件各荷物を取り出して受領したものと認められる⇒詐欺の故意に欠けるところはなく、共犯者らとの共謀も認められる。
<解説>
最高裁H30.12.11、最高裁H30.12.14:
いずれも現金送付型特殊詐欺の事案において、
被告人が指示や依頼を受けて、配達される荷物を名宛人になりすまして受け取り、回収役に渡す行為を複数回繰り返し報酬を得ていたなどの事実は、
荷物が詐欺を含む犯罪に基づき送付されたことを十分に想起させるもの
⇒被告人は自己の行為が詐欺に当たる可能性を認識していたことを強く推認させる。
詐欺の可能性があるとの認識が排除されたことをうかがわせる事情も見当たらない。
⇒
詐欺の故意及び共謀を認め、これを否定した各原判決を破棄。
判例時報2495
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