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2021年10月12日 (火)

高額での土地購入が市長の裁量権の範囲を逸脱したもので、違法とされた事例

奈良地裁R2.7.21

<事案>
奈良市の住民であるXら及びZら(共同訴訟参加人)が、
奈良市長であるAが新たな火葬場を建設するために、地権者であるBらとの間で、土地の売買契約を締結したことについて、
代金額が高額に過ぎるなどの違法
火葬場の建設工事契約の中に本件買収地に投棄されている産業廃棄物の撤去費用等を含めて奈良市が負担することは違法

奈良市の執行機関であるYに対し、
(1)
①主位的に、本件売買契約を締結したA及びBらに対して、民法709条及び719条に基づく損害賠償請求として、本件売買契約の代金額相当額の返還を請求することを求め
②予備的に、本件売買契約が無効である旨主張して、民法703条に基づく不当利得返還請求として、本件売買契約の代金額相当額の返還を請求することを求めるとともに、
(2)
本件請負契約の代金のうち、産業廃棄物の撤去費用等の支出の差止めを求めた。

<判断>
①・・・・本件売買を締結する必要性や交渉の経緯を踏まえても、産業廃棄物の処理費用を考慮すると、本件買収地は実質的には無価値
②産業廃棄物の存在を価格形成要因から除外した鑑定額の3倍以上である本件売買契約の代金額は余りにも高額に過ぎる
③奈良市において、土地収用法に基づく用地取得について検討した形跡が窺われない

本件売買契約の締結行為は、Aの市長としての裁量権の範囲を逸脱したものであり、違法
本件買収地は実質的に無価値⇒本件売買契約の締結により、本件売買契約における代金額相当額の損害が奈良市に生じた。

Bらについては、一般に契約締結の過程で、一方当事者が自己に有利な条件を提示、要望するのは当然というべき⇒不法行為は成立しない。

本件売買契約の締結は、Aの市長としての裁量権を著しく逸脱し、又は濫用したものとまでは認め難い⇒本件売買契約が私法上無効であると認めることはできない。

Aの不法行為責任を肯定し、Aに対して、本件売買契約の代金額と同額の支払を請求sるうよう求める限度で、Xら及びZらの請求を認容

<解説>
地方公共団体の長がその代表者として不動産の売買契約を締結することは、当該不動産を取得する目的やその必要性、契約の締結に至る経緯、契約内容に影響を及ぼす社会的、経済的要因やその他諸般の事情を総合考慮した合理的な裁量に委ねられている。

当該契約に定められた売買代金額が鑑定評価等において適正とされた売買代金額を超える場合であっても、前記のような諸般の事情を考慮した上でなお、地方公共団体の長の判断が裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用するものと評価されるときでなければ、当該契約に定められた売買代金額をもって直ちに当該契約の締結が地自法2条14項等に反し違法となるものではないと解されている。
(最高裁H25.3.28)

判例時報2488・2489

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