特別養子の準拠法が問題となった事案
東京家裁R2.9.7
<事案>
カナダ国籍の申立人と日本国籍の申立人妻が、日本国籍の未成年者との特別養子縁組を申し立てた事案。
<判断>
申立てを認容し、未成年者を申立人らの特別養子とする旨の審判。
<解説>
● 特別養子縁組制度について、民法の一部を改正する法律(令和1年法律第34号)で改正。
施行期日:令和2年4月1日。
but
施行時に裁判所に係属している事件には適用されない。
⇒
本件は改正前の法律が適用。
●隠れた反致について
養子縁組における準拠法:
養親となるべき者の本国法(法適用通則法31条1項前段)
同項後段:
養子となるべき者の本国法によればその者若しくは第三者の承諾若しくは同意又は公的機関の許可その他の処分(「保護要件」)があることが養子縁組の成立要件⇒その要件も備えなければならない。
⇒
カナダ国籍の申立人夫との関係では、カナダ法及び子の本国法である日本法における保護要件が、
日本国籍である申立人妻との関係では、日本法が
それぞれ適用。
法適用通則法41条本文:
「当事者の本国法によるべき場合において、その国の法に従えば日本法によるべきときは、日本法による。」という反致についての規定。
反致については、本国の国際私法に直接の抵触規定がなくとも、その国際私法全体から総合的に判断して日本法に準拠すべきものと認められる場合には、成立を認めるべきとされている。
その外国では国際民事訴訟法上自国に裁判管轄権のある場合には常に自国実質法を適用しているという場合に、その外国の国際私法全体として、もし日本の裁判所に管轄権があれば日本法を準拠法にするという態度をとっているものとして反致を認めるという考え方がある。(=隠れた反致)
●カナダ法における隠れた反致
カナダについては、
カナダ一般の国際私法の明文の規定は見当たらず、一般にケベック州を除くカナダの諸州の法大系は英国のコモンローを継受⇒人の身分に関する国際私法についても英国の国際私法と同様の原則がとられているものと解される。
~
養子縁組は養親のドミサイルがありかつ養親と養子が居住している地の法律によるべきもの
という裁判例あり。
⇒
養親となるべき者のドミサイルの認定が必要。
ドミサイル(=そこを本拠とする意思(永住意思)をもって居住する地域):
法域ごとに異なるところがある。
カナダ:
まず、出生により、ドミサイルを取得が、
当事者の選択によって新たにドミサイルを取得することができる。
選択によるドミサイル取得:
①現実に居住をしていること
②そこに永住する意思
の2つの要件が必要。
●本件
①申立人夫が平成30年から日本で生活し、今後も相当期間にわたって日本に居住する予定
②申立人夫が日本への永住も希望
⇒
申立人夫のドミサイルが日本にある⇒反致の適用を肯定。
判例時報2488・2489
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