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2021年10月24日 (日)

退職勧奨が不法行為とされた事例

宇都宮地裁R2.10.21

<事案>
バス会社Y1の正社員であるXが、上司であるY2ないしY5から退職強要等を受けた⇒Y2ないしY5に対し共同不法行為に基づき、Y1に対して使用者責任に基づき、慰謝料等の損害賠償を求めた。

<争点。
Y2らの発言が不法行為に当たるか

<判断>
Xが主張する退職強要行為のうち、途中で原告が辞めたくないと述べたにもかかわらず、Y2らが3日間にわたり、
①Y1には要らない
②他の会社に行け
③退職願を書け
等という発言をし、
その発言の態様は、複数人の上司であるY2らからX1人に対してされたもので、
その時間も長いものであった。

その後Xがうつ状態に至った。

Xの非難に値する接客態度が発覚したことを踏まえても、Xの自由な意思決定を促す行為として許される程度を逸脱する⇒不法行為に当たる。
その余の行為のうち、人格否定については、
Xの接客態度に問題があったことを踏まえ、社会通念上許容される範囲を超えた違法なもの。
Xを「チンピラ」「雑魚」と呼称した行為は、指導との関連性が希薄で、社会通念上許容される指導を超え、不法行為に当たる。
過小な要求については、同種の読書と文書の作成を1か月以上にわたり繰り返し指示

退職勧奨の違法性等の事情を総合して、不法行為に当たる。

<解説>
退職勧奨:
辞職を勧める使用者の行為、又は使用者による合意解約の申込みに対する承諾を勧める行為

それが労働者の退職の意思表示を促す事実行為に留まる限り、解雇とは性質が異なる⇒解雇権濫用法理の適用はない。
社会的相当性を逸脱した態様での半強制的ないし執拗な退職勧奨⇒労働者は使用者に対し、不法行為に基づく損害賠償を請求することができる。

違法性の一般的判断基準:
労働者が自発的な退職意思を形成するために社会通念上相当と認められる程度を超えたか否かという基準(東京高裁H24.10.31)。

具体例:
労働者が退職しない旨を表明しているにもかかわらず長時間・長期間にわたり退職勧奨を繰り返した事案(最高裁)
無意味な仕事の割当てによる孤立化等の嫌がらせを伴って退職勧奨が行われた事案(東京地裁)
その名誉感情を不当に害する屈辱的な言辞を用いて繰り返し執拗に退職勧奨が行われた事案

社会通念上相当と認められる範囲を超えた違法な退職勧奨がされたと認定。

本判決:
詳細な事実認定をした上で、
Xの自由な意思決定を促す行為として許される限度を逸脱するか
という判断基準に照らして検討。

判例時報2490

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