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2021年10月21日 (木)

任意後見契約に関する法律10条1項の「本人の利益のために特に必要があると認めるとき」に該当するとされた事案

水戸家裁R2.3.9

<事案>
事件本人Cの養子Aから後見開始の申立て(甲事件)⇒成年後見人に選任。
その後、事件本人Cと任意後見契約を締結した弁護士Bから任意後見監督人選任の申立て(乙事件)がされた。
①CとE(Cの妻)はAと養子縁組。
②Cは、F(Cの弟)の子I・Gと養子縁組。
③乙事件申立人Bは、Cの申立代理人として、Eの後見開始の審判の申立て⇒Eの成年後見人に。
④CとBの間で任意後見契約締結⇒任意後見登記。
⑤Cは、Bと同じ事務所の弁護士に訴訟委任し、BはEの成年後見人として、Aを被告として離縁の訴え。
⑥Aは、水戸家裁に、BをEの後見人から解任するよう申し立てた⇒Bは水戸家裁の勧めにより辞任の申立て⇒水戸家裁はそれを許可し、J弁護士及びK社会福祉士をEの成年後見人に。
⑦Aは甲事件申立て、その後Bは乙事件の申立て。
乙事件での診断書では、Cについて「自己の財産を管理・処分することができない。(後見相当)」にチェック。
⑧Cは、F及びGとの間で、1000万円をGに、500万円をFに帰宅する契約を締結。
⑦の診断書の日付け以降、GはCの預金口座から1500万円を引き出しているほか、合計360万円を引き出す等している。

<規定>
任意後見法 第一〇条(後見、保佐及び補助との関係)
任意後見契約が登記されている場合には、家庭裁判所は、本人の利益のため特に必要があると認めるときに限り、後見開始の審判等をすることができる。

<判断>
・・・

①Bが任意後見人になることにより、その権限を濫用される具体的ななおそれまではみとめられないものの、公平らしさという点で問題が残る。
②Cを保護するためには、同意権、取消権のない任意後見制度では、Cの保護の万全を期することができるかについて問題がある。

後見を開始することが「本人の利益のために特に必要がある」というべきであり、成年後見人としては中立的な第三者である弁護士を選任することが相当である。

甲事件の申立てを認容し、
乙事件は却下。

<解説>
任意後見法10条1項:

立法担当者:
特別養子縁組の要件に関する民法817条の7に規定する「子の利益のため特に必要があると認めるとき」と同様、特別の必要性を要件とする趣旨の規定。

具体例:
①本人が任意後見人に委託した代理権を行うべき事務の範囲が狭すぎる上、本人の精神の状況が任意の授権の困難な状態⇒他の法律行為について法定の代理権の付与が必要な場合
②本人についての同意見・取消権による保護が必要な場合

本審判:
任意後見制度優先の原則を厳格に考える立場を前提に、②の本人についての同意権・取消権による保護が必要な場合に該当。

判例時報2490

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